2025年1月7日火曜日

隠居の庭の雪

                 
 正月三が日に2回、「御降(おさがり)」があった。3日の夜は雪になったようだが、翌朝、阿武隈の山並みを見るとそれほど白くはない。5日はいつもの冬の山並みに戻っていた。

 いわきの平地も路面が濡れただけですんだ。しかし、夏井川渓谷はどうだろう。北向きの森の斜面はともかく、日当たりのよくない県道小野四倉線には雪が残っているかもしれない。

 冬場、渓谷の隠居へ行くかどうかは、山並みの様子を見て判断する。もう一つは、隠居の手前の小集落に住む友人がSNSに上げる情報だ。

5日朝、フェイスブックをのぞくと、雪が積もったのは県道から山に入った自宅周辺だけ、とあった。

県道には雪がない。山並みにも雪らしいものは見当たらない。5日は新年最初の日曜日である。いつものルートを利用して隠居へ出かけた。

 いわきはハマ・マチ・ヤマの三層構造の広域都市である。別の言葉でいえば、沿岸部と平野部、そして広大な山間部からなる。

 夏井川渓谷はマチとヤマの境目に位置するといってもいい。平野部が住宅の1階、山間部が2階だとすると、渓谷は1階と2階をつなぐ階段の「踊り場」だ。

標高は200メートルほどで、雪の降り方も平地とそう変わらない。ところがその先、ヤマになると雪が降ればすぐ銀世界に変わる。

渓谷の隠居へ通い続けて、今年(2015年)で満30年になる。30回も渓谷の冬を経験すれば、道路のどこが雪で危ないかは体が覚えている。

 行けるところまで行こう。道路に雪が残っていたら、そこで引き返す。隠居までの要注意ポイントは2カ所だ。

まずは平地から段丘に移り、さらに渓谷へと入っていくあたり、南側に杉林があって日がささない「地獄坂」がある。ここが最初のポイントだが、さいわい雪はなかった。

次のポイントは江田の手前のS字カーブ。あまり日がささないところでもあり、何度か圧雪状態を経験してきた。ここもふだんの路面と変わりがなかった。

ただ、道端にはかすかにまだら雪が残り、先へ進むにつれてそれが目立つようになった。

隠居に着くと、庭の一部に雪が残っていた=写真。日当たりは悪くはない。が、なぜかそこだけ雪に覆われている。

籠場の滝の下流から上流へと、谷底には巨岩が転がっている。それもすっぽり綿帽子をかぶっていた。北向きの対岸の森も林床が白く染まっている。

県道沿いの広葉樹がすべて葉を落としたために見通しがよくなった。それで谷底も、対岸の様子もはっきりわかる――。

と、これは日曜日の渓谷の様子だが、翌6日は午後遅くから雨になった。予報では会津を含む福島県全域が雨のマークになっていた。それも南西からの雨雲だ。この雨量では、隠居の庭の雪も消えたに違いない。

0 件のコメント: