「お前百まで、わしゃ九十九まで。ともに白髪の生えるまで」。そんな言葉を思いおこすような「ジイバア人形」だ=写真。会津に住む後輩の奥方から届いた。手づくりだという。
ジイ様もバア様も頭は白い。ジイ様はそのうえ白い鼻ひげをはやして、焦げ茶色の毛糸の帽子をかぶっている。バア様の顔には丸い老眼鏡。ともに着物姿で赤い座布団にちょこんと座っている。
遠い昔の大家族時代を象徴するジイバア人形にはちがいない。そのころは、世の中もゆっくり変化していた。
が……。核家族時代を生きるジイバアは、世の中の動きが速すぎてついていけない、と思うことがよくある。
主に週末、車でスーパーへ買い物に行く。若いころも、年老いた今も、この習慣は変わらない。
ところが人手不足とコロナ禍のためか、最近は対面のレジが減ってセルフレジが増えた。もちろん、レジのコーナーには操作にとまどう客を手助けする店員が控えている。
ある店は全部がセルフレジ、別の店は従来の対面レジがほんの何列か、というところまでリニューアルが進んだ。
対面で精算をするレジにはいつも長い列ができる。そこに並びながら、若い人たちがさっさとセルフレジで会計をすませるのを、感心しながらながめている。
しかしやっぱりセルフレジに慣れないと、これから買い物に支障をきたすのではないか、そんな思いもふくらむ。
カミサンが店員に聞いてやり方を覚え、私がそばに立ってそれを「学習」することにした。
商品に付いているバーコードを精算機に読み取らせるだけ。そして、表示に従って画面をタッチするだけ。
とはいっても、ジイバアがその流れをすらすらこなすまでには時間がかかる。ま、慣れてしまえば手間が省けることは確かだろうが。
何度かセルフレジを経験したある日、いつものようにカミサンのわきに立って精算作業を見ていたら、ナメコのときに機械が2回続けて鳴った。
精算後に出てきたレシートをチェックすると、図星だった。ナメコを1袋多く買ったことになっていた。
ナメコの袋をかざしたあと、手元が揺れたかしてまたその袋のバーコードを精算機が読み込んでしまったのだ。
近くにいた店員にいうと、精算を修正する場所に案内され、新しいレシートと多く払った金額の返還を受けた。レシートと実際の品数を確かめる必要があることを痛感した。
タッチパネルで注文する飲食店も増えた。休日なので外食を、となって入った店がそうだった。
水を持ってきた店員に頼んで注文した。支払いもセルフレジだ。ジイバアはタッチパネルとセルフレジで頭が真っ白になりそうだった。
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