2025年1月10日金曜日

冬のネギ

                      
 師走に入るとすぐ、平・神谷の夏井川沿いに住む知人からネギをちょうだいした。見事な太ネギだ。用があって訪ねたら、すぐ脇の畑から掘り取ってきた。

 さっそくネギジャガの味噌汁にして味わう。太ネギは硬い――というイメージがあったが、思った以上に軟らかかった。

夏井川渓谷にある隠居の庭で「三春ネギ」を栽培している。田村地方から入ってきた昔野菜で、ある家に泊まった朝、ネギジャガの味噌汁をすすって驚いた。

私は田村郡の山里で生まれ育った。ネギジャガの味噌汁が好きだった。そのネギと同じ味がした。甘くて軟らかい。

以来、その家から苗をもらい、種ももらって、三春ネギの栽培を始め、自分でも種を採るようになった。

収穫期は晩秋から冬だが、今季は育った苗が少ないこともあって、食べたのはほんの少しだった。今は種取り用のネギしか残っていない。

ネギづくりの参考にしているのは、平地の夏井川沿いにあるネギ畑だ。わが家からマチへ行った帰りによく堤防を利用する。

今ならハクチョウやカモ、春は民家の庭先の白梅、夏なら南から渡って来るオオヨシキリ、ツバメたち……。堤防から動植物を観察しては季節の移りゆきを体感する。

と同時に、ネギ畑の「農事暦」も頭に入れる。夏の定植から始まって、追肥・土寄せ、冬の収穫と、三春ネギ栽培の参考にする。

 いつもチェックする畑がある。今季は師走に入っても、収穫が始まる気配はなかった。中旬になってもそのままだった。

 暮れの12月29日に通ると収穫が始まり=写真、年が明けた1月5日には3分の2が消え、9日には3列しか残っていなかった。

朝晩散歩をしていたころは、冬になるとビニールハウスの方から「ヒューッ」と機械で皮をむく音がして、ツンとネギの匂い(硫化アリル)がしたものだった。

ハウスの中央にすきまがあって、青く大きなネットが外に出ていた。空気を利用してむいた皮をそこへ飛ばす――車で通るだけになった人間には懐かしい光景と匂いだ。

平・神谷地区はネギの生産地として知られる。上流から運ばれてきた土砂が広い範囲に堆積している。砂漠生まれのネギには、川の下流の砂地は格好のゆりかごでもある。

 が……。農作業をしているのは、だいたいお年寄りだ。耕作をやめて雑草が生い茂っているところもある。平地でも、山間地でも事情は変わらない。

 私自身、三春ネギは「自産自消」のつもりでいたが、今季はそんなことはいっていられない。

 スーパーに「曲がりネギ」があれば、かごに入れる。道の駅へ行けば、どんなネギがあるか確かめる。

先日は「赤ネギ」があった。数年前、それを買って食べたら、とろみがあった。今回は別のネギがあったので見送ったが、ネギのウオッチングも冬場の楽しみの一つではある。

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