近年は主に「ネイチャーライティング」といわれる分野の本を読んでいる。「自然環境と人間の対話、交流、共生を目指すことを主要なモチーフとする小説、詩、ノンフィクション、エッセイなど」のことだ(コトバンク)。
1970年前後に米国で確立したジャンルで、「地球規模で進行する自然破壊という現実を前に、ネイチャーライティングは全世界的な注目を集める」ようになったのだそうだ。
米国自然史博物館は、博物学者ジョン・バロウズ(1837~1921年)を記念して、毎年、すぐれたネイチャーライティングの著作を1冊選び、ジョン・バロウズ賞を贈っている。
その受賞作品が日本語訳で出ているかどうか、まずはネットで検索する。出ているとして、次にいわきの図書館にあるかどうかを確かめる。何冊かあった。
図書館は本の森。その森には、こちらが気づかずにいる本がたくさんある。バロウズ賞の本は、林業や旅行、植物学のコーナーだけでなく、出納書庫にも眠っていた。
というわけで、きょうはバロウズ賞を含むネイチャーライティングの本の話を――。
先日、ブログで取り上げた米国のライター兼作家クリスティン・オールソンの『互恵で栄える生物界――利己主義と競争の進化論を超えて』(西田美緒子訳、築地書館)で紹介されている学者の本が3冊、図書館にあった=写真。
1冊はスザンヌ・シマード『マザーツリー 森に隠された「知性」をめぐる冒険』(ダイヤモンド社、2023年)。
ほかの2冊は、ロビン・ウォール・キマラー『コケの自然誌』(バロウズ賞=築地書館、2012年)と『植物と叡智の守り人 ネイティブアメリカンの植物学者が語る科学・癒し・伝承』(同、2018年)だ。3冊とも三木直子さんが訳している。
シマードは菌根ネットワークを研究するカナダの森林生態学者、キマラ―は本のサブタイトルにもあるように、ネイティブアメリカンの植物学者だ。
3冊はいずれも分厚い。まんべんなく取り上げるのは手に余る。研究者として突き止めた菌根ネットワークと、女性としての個人史をからめた『マザーツリー』のほんの一部を紹介する。
「木々は互いに網の目のような相互依存関係のなかに存在し、地下に広がるシステムを通じてつながり合っているということを私は発見した」
そのうえで、母なる木=マザーツリーは「森で交わされるコミュニケーション、森の保護、森の知覚力の中心的存在」であることを強調する。
さらに、森の母なる木が死ぬときには「その叡智を親族に、世代から世代へ引き継ぎ、役に立つことと害になること、誰が味方で誰が敵か、つねに変化する自然の環境にどうすれば適応し、そこで生き残れるのか、といった知恵を伝えていく」。
「はじめに」だけでも圧倒される。あとはじっくり脳内にネイチャーライティングの滋養を染み込ませる。大作ぞろいだけに、そんな心境になっている。
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