2016年10月13日木曜日

エンジンオイル

 車のエンジンオイルを定期的に交換している。目安の走行距離を記したシールが、ドアの付け根のボデーに張ってある。先日、息子が来て、「Tさんが『エンジンオイルを交換する時期ではないかな』っていってたよ」という。あとで走行メーターを確かめたら、目安の数字をはるかにオーバーしていた。
 Tさんはディーラーだ。この20年ほど、車に関してはなんでも彼に頼んでいる。その彼が最近、独立した。普通はそれでバイバイとなるが、彼とは違っていた。個人事業主になって、かえって相談しやすくなった。

 ディーラーが企業に属しても、ユーザーは企業と付き合っているわけではない。ディーラーとの信頼関係のなかで車を買い替え、車検やオイル交換などをしている。
 
 彼がしばらく留守をしたとき、整備工場に電話をしたら、「車を持ってきてください」といわれた。そのとき初めて、代車を用意してオイル交換をするのは彼独自のサービスだったと知った。なんというか、顧客と車のメンテナンスを第一に考えるプロの意識に感動したものだった。

 組織と個人ということでいえば、好きではない企業(組織)でもじかに向き合う人間が信頼できれば付き合うし、頼み・頼まれもする。新聞社と記者、出版社と編集者、役所と職員、ホテルと従業員……。要は、「看板」よりも「人」。

 看板を外したとき、それまで付き合っていた人間が離れた、ということはよくある。そうならないよう、夜の付き合いは「一市民」として、を心がけてきた。企業として付き合っていた人は、会社をやめると離れていった。と、まあ、Tさんの独立にかこつけて自分を振り返ってみたが、彼はたぶん自分の「看板」でやっていける。
 
 彼でないとだめだというユーザー(私もその一人だが)がいる。独立して最初に車を買ってくれたのが息子だったそうだ。で、そのとき、私の車のエンジンオイルの話になったのだろう。
 
 電話をすると、代車でやって来た。ほどなく帰ってきた車を見ると、乱雑な車内がきれいになっていた。一瞬、筋雲を遊ばせる青空=写真=のような気持ちになった。掃除機をかけてごみを取り、布でほこりを取ってくれたのがわかる。この気配りにユーザーはまいってしまう。暮れの車検も当然、彼に頼む。

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