2017年6月29日木曜日

自前の食材

 ある朝の食卓――。マメダンゴ(ツチグリ幼菌)の炊き込みご飯、キュウリの糠漬け、豆腐とネギの味噌汁=写真=のほかに、前夜のおかずの残りが出た。
 マメダンゴは、夏井川渓谷にある隠居の庭で採った。キュウリは、隠居の庭の菜園で生(な)り始めたのを収穫した。初物だ。
 
 同じ菜園の一角に、毎秋、三春ネギの苗床をつくる。今年(2017年)も少し前に定植したが、密生して未熟なままの苗が残っている。1本1本は「ポッキー」くらいの太さだ。
 
 放置しておくのはしのびない。隠居へ行くたびに一つかみほど収穫する。土を洗い落とし、枯れた葉を取り除いて、すぐ調理できるようにしておく。下ごしらえをしてカミサンに渡せば文句は言われない。刻めば納豆や卵焼き、味噌汁の具になる。
 
 漬物は、冬の白菜漬けも夏の糠漬けも私がつくる。毎年、ゴールデンウイークをはさんで切り替える。初夏は糠床の塩分や軟度、風味を調整する時期。サンショウの若葉や、整枝した際に出たトウガラシの葉を加えたり、塩ザケの皮を入れたりして、糠床に栄養を補給する。それが、その家独特の味に結びつく。
 
 キュウリは、今は半日で漬かる。夕方漬ければ朝には食べられる。いわゆる一夜漬けだ。朝に漬ければ夕方には――ということで、このごろは酒のつまみになる最適の時間を意識しながら漬ける。

 三春ネギはやわらかいのが特徴の一つ。子ネギだからやわらかいのは当たり前だが、それを引いても独特のやわらかさがある。キュウリの苗は初めて、地元の種苗店から買った。しっかりしている。マメダンゴは梅雨期にしか手に入らない。
 
 たまたま隠居の庭で採れた食材のマメダンゴ、キュウリ、ネギ苗が食卓にそろった。「地産地消」の前に「自産自消」が大事と思っている人間にも、めったにない組み合わせだ。食材もまた、一期一会。質素な食生活でも大きな喜びを感じるときがある。

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