アボリジニの楽器で「イダキ」(ディジュリドゥ)という。演奏を聴くのは2度目だ。
12月に東京で「Listen!いわき」が開かれた。前夜、会場設営を終えたあと、ボランティアで参加したTさんが「イダキ」を演奏した。初めて見聞きする楽器だった。スタッフとわれらいわきからの3人だけが聴くぜいたくな演奏会になった。夜更けにはそろって中天の皆既月食を見た。
2度目はいわきで聴いた。「Feel!いわき」が2月11~12日に開かれた。薄磯の民宿「鈴亀」での交流会の席で、Tさんが津波で犠牲になった人たちのために鎮魂の演奏をした=
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「イダキ」はシロアリが食い散らして中空になったユーカリの木の管楽器だ。唇の振動を管内に反響させ、独特の低音を発生させるという。太鼓のようなリズムを刻んだり、ゆるやかに長く音をのばしたり……と、循環呼吸で絶え間なく演奏を続ける。とにかく腹にずしりと響く。いわきの自然界で一番似ているのはウシガエルの鳴き声(だが、たとえが悪いか)。
Tさんは薬剤師だ。歌手グループ「ケツメイシ」とかかわりがあった。そもそも「ケツメイシ」の名からして薬草の「決明子」に由来する。東京薬科大学出身者がいるということも、Tさんを介して知った。「ケツメイシ」のCDを聴いている者にとっては、うれしい出会いだった。
「鈴亀」から薄磯の海までは、豊間中の体育館と校庭をはさんですぐだ。鎮魂の調べは波紋となって、時折、灯台の光が旋回するほかは闇に塗り込まれた薄磯の地に広がったことだろう。
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