早朝の夏井川堤防。カタツムリがアスファルト路面を歩いていた=写真。<おい、車にひかれるなよ>。カメラのシャッターを押しながら胸の中でつぶやく。歩みはのろい。でも、<おまえは家ごと移動できるんだよな>。津波で家を失い、家があっても原発事故で避難した人たちがいる。思いはそちらへ転がる。
雇用促進住宅や民間アパートなど、応急仮設住宅とは別の一時借り上げ住宅に入居している被災者が今、何を思い、何を考えているのか――。3・11後、いわき市で支援活動を続けている「シャプラニール=市民による海外協力の会」が今年3~5月、いわき駅前賑わい創出協議会とともにアンケートをした。
シャプラは、被災者のニーズに即して支援の内容を変えてきた。2011年10月9日、いわき駅前再開発ビル「ラトブ」に被災者のための交流スペース「ぶらっと」を開設した。「ぶらっと」は2012年4月からイトーヨーカドー平店に移転した。併せて昨年12月から毎月、情報紙「ぶらっと通信」を発行している。
「ぶらっと通信」を発送している1000世帯強に質問用紙、回答用紙、返信用封筒を同封したところ、313世帯(29.2%)から回答があった。その結果は(シャプラのHPから)――。
全体の2割弱が一人暮らし世帯。うち約7割が60代以上。見回りなどによる生活支援の必要性が高い。回答者のうち約半数が就労している一方で、働きたくとも働けない人が3割弱いる。特に、相双地区からの避難者の中で何らかの理由により就労できていない割合が高い。
「精神的に不安定」「自殺を考える」といった回答もあり、先が見えないことへの不安や家族離散による喪失感などを含め、精神的な問題が大きい。避難生活の長期化に伴い、居住環境に関する不満が高まっている、という。
行政をはじめ、企業・個人ともに復興へと向かう流れは当然だろう。と同時に、その流れのよどみに沈んだままの被災者もいる。
「ぶらっと」のスタッフ・ボランティアは先日、いわき明星大へ出向き、臨床心理士の窪田文子教授から「災害被災者のための傾聴技法」と題する話を聴いた。被災者の声に耳を傾ける。それにもワザがいる。少しでもそのワザを吸収しようというわけだ。
あなたは一人じゃない、あなたを忘れない――一緒にいてくれているんだ、と思ってもらえることが大切なのだという。「心のケア」が大切になってきた。
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