夏井川渓谷の隠居には、石垣で土留めをした庭の下に庭(空き地)がある。一画にフキが群生している。早いときには、師走のうちにフキノトウが出る。正月、みじんにした葉を雑煮に散らす。今年は2月下旬になってやっと頭を出した=写真。厳冬ではなかったはずだが、落ち葉に隠れて見えなかった。さっそくみそ汁に散らして春の土の味を楽しんだ。
東日本大震災からきょう(3月11日)で丸4年、つまり5年目の始まりでもある。3・11は、個人的にはもちろんだが、日本人あるいは人類にとっても大きな災禍だった。震災翌年の年賀状には「原発震災紀元2年=2012年」と記した。以後、数字を更新している。
その意味では元日と3月11日の2回、「あのとき」からの時間の流れを振り返る。まずは自分のこと、夫婦のこと、家族のことが走馬灯のように頭の中を巡る。
わが家は「大規模半壊」に近い「半壊」だった。制度を利用して多少は改修したが、亀裂の入ったコンクリートの基礎までは直せなかった。家の前の道路にへこみができているので、大型車が通るたびに家が揺れる。一度、へこみにアスファルトを盛ってもらった。
そこがまたへこんだので、昨年(2014年)5月、行政区内の要改修個所と合わせて市に要望したが、いまだに改善されない。先日、確認に行ったら、「要望件数が多いので」ということだった。
夏井川渓谷にある隠居も無傷ではなかった。庭が全面除染の対象になり、表土がはぎとられたあとに山砂が敷き詰められた。石垣が一部、地震で崩れた。ブルーシートをかぶせたままにしてある。そのシートも、ボロボロになってきた。かといって、自力で石を積み直すウデも、カネもない。
新しいブルーシートをかぶせて、庭の砂の流出を抑えるしかないか――フキノトウを探しながらも、目の隅には絶えず崩れた石垣が映っている。
同じように軽微な被害のために、復旧のめどを立てられないものがあちこちにあるのではないだろうか。
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