カタクリのような早春植物を「スプリング・エフェメラル」(春の妖精)というそうだ。
昔、植物が好きな女性を「学級委員長」に、自分たちで阿武隈の植物を見て回る「山学校」を年に何回か開いた。だいたいはいわき市に住む植物研究の第一人者、湯澤陽一さん(元高校教諭)が「先生」を務めた。
里山の植生のほか、戸草川渓谷(いわき市)のカタクリ大群落、平伏沼(へぶすぬま=川内村)の奥のブナの巨樹、大滝根山(田村市)のスミレたち、差塩湿原(さいそしつげん=いわき市)のミツガシワ、小白井(おじろい=いわき市)のリュウキンカなど、奥山の植物をこの目に焼きつけた。
頭ではなく、足を使って見たものは骨の髄までしみこんでいる。とりわけ、冬枯れの湿地や林床から萌(も)えでるスプリング・エフェメラルには、なんともいえない感動を覚えた。
この週末は晴れて風もなく、穏やかな連休になった。あそこにあれが咲きだしているのではないか、あそこのあの木に花が咲いているのではないか――春めいた陽気に骨の髄から記憶が浮上してきた。
きのう(3月22日)朝、夏井川渓谷の隠居へ出かけ、すぐスプリング・エフェメラルのキクザキイチゲをチェックした。咲いていた=写真。別のチェックポイントにあるマンサクの花も満開だった。ヤシャブシは主に谷側の道沿いで黄色い花穂を垂れていた。溪谷の入り口にはキブシが咲いていた。
すると、あそこではカタクリとニリンソウが――。いわきの平地では、この花たちは3月中~下旬に咲く。盗掘跡を見るのがいやで、今はほとんど足を向けない。斜面を上ると息が切れるようになったのも大きい。いずれにせよ、春がゆっくりといわきに近づいている。
繰り返すが、この2日間はいい骨休めになった。初日。田村市の実家へ墓参りに行き、とんぼ返りで夜は震災後に出会った仲間と歓談した。2日目。溪谷の隠居で過ごし、夜には帰宅してカツオの刺し身を食べた。隠居の対岸、裸の雑木の枝越しに滝の水がキラキラ光っていた。夕方には下流の夏井川の堤防で今年初めてツバメを見た。ハクチョウはまだ数羽が残っている。
きょうは小学校の卒業式。それを振り出しに、月末まで怒涛の1週間が続く。区長仲間の反省会、行政区の総会、前後に役所がらみの会議。並行して、4月からのおしゃべりの下準備。春霞の向こうに迷い込んでしまわないよう、頭の切り替えをちゃんとしないと――。
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