2015年3月22日日曜日

春の墓参

 春分の日のきのう(3月21日)朝、10時過ぎには田村市常葉町の実家にいた。いわき市のわが家を8時半すぎに出た。
 いわき四倉ICから常磐道を北上し、常磐富岡ICで下りたあと、県道いわき浪江線(通称・山麓線)経由で国道288号をひたすら西に進んだ。所要時間はざっと1時間半。時計回りに夏井川沿いをさかのぼるのとほぼ同じだった。

 四倉IC~常磐富岡IC間を初めて走行した。常磐道が全通した効果か、東京方面へ南下する車が列をなしていた。北上する車も思ったよりあった。連休初日の朝ということで、レジャーや墓参に利用する車が多かったのではないだろうか。私がそうだった。

 この区間は阿武隈高地の東麓を走る。丘・田んぼ・丘・田んぼの繰り返しで、田んぼの上は高架橋になっている。3・11前はその下を縫う山麓線を利用していた。山並みや集落の景色にはなじみがある。が、その家々には今、人は住んでいない。屋根の白い土のう(東日本大震災で崩れた屋根のグシを覆っていたシートのおもし?)がぼろぼろになっていた。手つかずのまま4年が過ぎた。

 いつ見ても暗澹たる気持ちになるのが黒いフレコンバッグだ。各所に仮置きされていた。緑色のネットがかけられたものもある。通行止めになっていた山麓線沿いも黒い袋だらけだ=写真。288号にはスクリーニング場もあった。

 途中の渓谷にある玉の湯の南側に、玉の湯トンネルができていた。平成16年度に着工し、震災と原発事故で中断したあと、昨年1月に工事が再開され、暮れの12月25日に開通した。

 快晴、無風。本来なら気持ちのいいドライブなのだが、道にいるのは制服を着てマスクをした警備員ばかり。田村市都路町に入ってやっとお年寄りがちらほら道端に立って、遠くを眺めたり話をしたりしていた。

 実家は双葉郡双葉町と郡山市を結ぶ国道288号沿いにある。朝は東へ向かう車でいつもより混雑したという。福島県の中央部から双葉町や大熊町へ行くには最短のルートだ。郡山市や会津若松市などに避難している両町民が墓参りに向かったのだろう、ということだった。
 
 私が墓参りをしたのは、そこに父母や祖父母が眠っているからだ。身近な死者の記憶があるからだ。仮にその墓がふるさと以外のどこかへ移転したら、そちらへ線香をあげに行く。ふるさととはたぶん、縁が切れる。避難者も同じだろう――実家の墓参りをしながら、そんなことを思った。

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