日曜日(12月11日)のNHKスペシャル「自閉症の君が教えてくれたこと」を見た=写真。2年前に放送されたドキュメンタリー「君が僕の息子に教えてくれたこと」の続編だ。「自閉症の君」とは東田直樹さん、24歳。自閉症で会話ができない。が、紙に書かれたパソコンのキーボードと同じ配列の文字盤を押しながらの発語=コミュニケーションはできる。そうして、番組では質疑応答が繰り返された。
その「文字盤ポインティング表現法」で紡ぎだされる言葉がすごい。作家として仕事をしている、というのもうなずける。「僕は人の一生はつなげるものではなく、一人ずつ完結するものだと思っています。命がつなぐものであるなら、つなげなくなった人はどうなるのだろう。バトンを握りしめて泣いているのか、途方にくれているのか」。ここでうなってしまった。
2年前、番組を見たあと、すぐ彼の本『跳びはねる思考』(イースト・プレス、2014年刊)を買って読んだ。
「人生という物語が、いつ終わってしまうのかわかりませんが、僕は、ひとつひとつのできごとに解説が必要な長編小説ではなく、単純明快な詩を描き続けたいのです」。木にたとえると、地上に現れているのは「散文」、それを支える根っこは「詩」だ。今度は作家、いや詩人には世界がどう映っているのか、という興味から番組を見た。今度もこちらの見方・考え方が広がった。
『跳びはねる思考』をまた読み返す。「自然はどんな時も、人々に平等です。そのことが僕の心を慰めてくれるのです。(中略)つらい気持ちは、どうしようもありませんが、ひとりではないと思える瞬間が、僕を支えてくれます」「僕が植物をうらやましいと感じるのは、考えなくてよいからではありません。植物は、どのような環境の中にあっても美しく咲こうとし、種を残そうとするからです」
2年前、番組づくりに携わったディレクターがガンになり、闘病生活を送った。職場復帰を果たしたものの、月に1回の検査が続いている。ハンディキャップを負ったディレクターの目で、あらためて東田さんを取材したいと思ったのだという。
内面を知ること、知ろうとすることの大切さ。それを教えてくれるのは、やはり文学ではないだろうか。人の心の奥底にまで思考の錨(いかり)が届くからこそ、東田さんは作家(詩人)として生きている。自閉症の東田さんの内面を伝える番組を見て、またそのことを思った。
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