いわき市常磐の野口雨情記念湯本温泉童謡館がおととい(1月5日)、開館10周年を迎えた。記念式典とコンサートの間に、雨情の孫である山登和美さん(栃木県鹿沼市)が「祖父雨情のこぼれ話」と題してミニ講演をした=写真。
山登さんは雨情の次女千穂子の息子。戦後生まれだから終戦直前の昭和20年1月27日に亡くなった祖父については知らない。母に聞いたことと断って話した。
母親は子どものころ、妹と一緒に雨情からいわれて墨すりをした。これが嫌で仕方がなかったという。おかげで、雨情の字はだいたいわかるようになった。真贋鑑定に持ち込まれる作品の半分は偽物だったそうだ。
大ヒットした「波浮(はぶ)の港」だが、雨情は写真を1枚見せられただけで、ふるさとの平潟あたりを思い出しながら詞を書いた。すると、伊豆大島の人たちから指摘された。「磯の鵜(う)の鳥」は波浮にはいない、「夕焼け小焼け」は西側が山になっているので見えない――。
「証城寺の狸囃」にはモデルの寺があった。歌が発表されると、さっそく寺からクレームがついた。「実際の『證誠寺』ではなく、心の中の寺である。その証拠に『誠』は『城』と字が違うではないか」。やがては寺から感謝されるようになったという。
「シャボン玉」は幼くして死んだわが子を詠んだ歌――巷間、言われていることだが、山登さんはこういった話をきっぱりと否定する。「わが子のこと、家族のことを歌ったものは一切ない」
山登さんは、実は9年前に開かれた童謡祭にも出演している。童謡のまちづくり市民会議の久頭見淑子会長を相手に、質問に答えるかたちで雨情のエピソードを披露した。
9年前は山登さんの好意で雨情愛用の旅行カバンと帽子が童謡館に展示された。今回は小川小学校が所蔵する「青い眼の人形」が展示されている。名前は「メリー」という。
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