いわき駅前再開発ビル「ラトブ」5階のいわき総合図書館入り口に、持ち帰り自由のリサイクルコーナーがある。おととい(10月12日)は絵本2冊を手に入れた。
うち1冊はアデル・ジェラス/作、クリフ・ライト/絵、直野洋子/訳『わたしからあなたへ』(草炎社、2006年)。ウサギの子どもが主人公だ。「ピーター・ラビット」と同じイギリスのアナウサギにちがいない。どう描かれているのか。
空いっぱいの朝の光・おはようのキス・はばたく夢・隠れる木・木漏れ日・雨上がりの水たまり・石でつくった塔・笑顔・静かに安らかに更ける夜・月明かり・星――みんなあなたへの贈り物だ。自然は万物の命のみなもと、自然の中で暮らす生きものたちよ永遠に、ということだろう。
ページをめくると、すみっこに顔から胸が赤橙色のヨーロッパコマドリが描かれている。中の方でもところどころ、ウサギにつかず離れずといった感じで登場する=写真。ウサギたちのふるまいを目撃する読者の代表なのかもしれない。イギリスでは市民になじみの深い鳥で、「国鳥」扱いをされているほど人気があるようだ。
9年前の2009年9月、同級生の病気見舞いと還暦を記念して“北欧修学旅行”を敢行した。スコットランド(イギリス)の東、ノルウェーの古都・ベルゲンでは、1979年に世界文化遺産に指定された「ブリッゲン」や、郊外のトロルハウゲン(トロルの丘)の作曲家・グリーグの家を見学した。なかでも、氷河がつくった海、ソグネフィヨルドは圧巻だった。
足元の小さな一点景も記憶に刻まれた。グリーグの家の庭では、ヨーロッパコマドリに遭遇し、タヌキノチャブクロほかの菌類を見た。「1年に400日は雨が降る」という多雨地帯のうえ、緯度が高いために、北欧ではキノコの腐敗を早めるハエの幼虫が少ない。向こうで長くキノコ狩りを楽しめるのはそのためだという。
北欧旅行を楽しんだ年の12月。イタリアに住むカミサンの同級生からクリスマスカードが届いた。夏休みに別荘で過ごした際、軒下に巣くっていたスズメバチの写真と、10月初旬、いつもより早く自宅の庭にやって来たというヨーロッパコマドリの写真が添えられていた。北方のヨーロッパコマドリは、冬には暖かい地方へ南下して越冬する。
人に見守られているヨーロッパコマドリに対して、日本のコマドリはどうか。日本野鳥の会いわき支部の支部報「かもめ」第138号(2018年4月1日発行)が届いたとき、愕然とした。
支部長の年頭所感――。いわき市内で計画が進められている再生可能エネルギー6事業(風力発電)のうち、(仮称)阿武隈南部風力発電事業について、「市内で唯一のコマドリやコルリの繁殖地であり、その他の希少種や渡り鳥への影響、更には環境保全の観点からも問題が大きい」として危惧し、県と市に配置計画の見直しなどを求めて要望書を提出した、という。
同支部発行の『いわき鳥類目録2015』によると、コマドリは夏鳥で、4月末に南からいわきへ渡ってくる。落ち着く先は落葉広葉樹に混じって背丈の高いササが茂る800メートル級の山地だ。繁殖が局地的なこともあって、観察が難しい。風車建設でコマドリの営巣地を失ってはならない。
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