合羽を着て(かどうかはわからないが)V字谷の森に分け入り、シロを巡り歩く。マツタケ採りはもう帰って寝ているはずだから、それ以外のアミタケ、あるいはウラベニホテイシメジが狙いか。
原発震災後はすっかり天然キノコと縁遠くなった。情けないとは思いつつも、スーパーで栽培ナメコを買ってきては天然キノコを思い浮かべながら食べる。それでも年に1回くらいは本物が手に入る。先日はコウタケとシャカシメジが届いた=写真。二つとも採ったことはない。
シャカシメジは、見るのも初めてだ。手に持つと重い。上から下から観察する。根元の菌糸のかたまりが小学生のこぶしくらいある。そこから数えきれないほどの傘が伸び、あるいは生まれつつある。別名センボンシメジ、漢字で書くと「千本占地」。ついでに、なんで「シャカ=釈迦」なのかというと、傘の発生具合が釈迦の頭の螺髪(らほつ=パンチパーマを連想してしまう)に似るからだそうだ。
阿武隈高地では、コウタケを「イノハナ」と呼ぶ。震災前は阿武隈の実家へ帰ると、義姉がよく「イノハナご飯」を炊いてくれた。阿武隈の郷土料理でもある。シャカシメジは万能のようだ。汁物・炒め物・炊き込みご飯・てんぷら・ホイル焼き……。味がさっぱりしていて上品なのだろう。
コウタケは乾燥させるといちだんと香りが強くなるというが、前にそれをやって失敗した(カビが生えた)。それに懲りて、今は手に入ると裂いてゆで、必要な分を取ったあとは袋に小分けして冷凍・保存するようにしている。
土地柄なのか、夏井川渓谷の小集落では、コウタケよりはマツタケの話が優先する。それぞれがシロを持っている。ところがその奥、阿武隈の山里では、マツタケよりイノハナ(コウタケ)の話が多くなる。どちらも高級菌だが、マツタケは昔も今も全く縁がない。やはり、コウタケに引かれる。強烈な香りをかぐと、阿武隈の豊かなキノコ食の世界が目に浮かぶ。
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