2018年10月25日木曜日

ここにも少子化の波

 ここにも少子化の波が――。田村市立常葉中学校の昭和38年度卒の同級会が日曜日(10月21日)、郡山市の奥座敷・磐梯熱海温泉で開かれた。宴会場で、バスの中で、同級生と旧交を温めているうちに思い浮かんだのが、冒頭のフレーズだ。「ふるさとの今」がよくわかった。
旅館のバスが田村市常葉町~磐梯熱海温泉を往復した。東北新幹線とJR磐越東線の利用者は、郡山駅前でバスに合流した。マイカーで直接旅館へ向かう組もいた。私は実家に用があったので、いわきから常葉へ車で出かけ、そこからバスに乗った。帰りは逆のコースでいわきへ戻った。

 バスの発着場所は「役場」(呼び名は昔から変わらないが、5町村合併で「常葉町」から「田村市常葉町」になり、「町役場」も「田村市常葉行政局」に変わった)の駐車場。これが集合場所としては一番わかりやすい。

駐車場の道路向かいに子松神社がある。子どものころの遊び場の一つだ。確か10月25日、つまりきょうが本祭りのはず――。聞くと、25日に近い日曜日に変更されていた。今年(2018年)は27日が宵祭り、28日が本祭りだという。

 29年前、このお祭りについて書いた。「一筋町=写真=を氏子の行列が練り歩く。先頭を行くのは天狗。次に長獅子。そして、小学生による鞨鼓(かっこ)獅子、大人の神輿、中学生のタル神輿……。(略)沿道に鈴なりの町民。暴れたりしゃがみ込んだりの路上パフォーマンスを繰り広げる長獅子。それを見て泣き出す子。今も昔も変わらぬ渡御風景だ」

鞨鼓獅子を、俗に三匹獅子といった。一時休止されたが、平成22(2010)年に復活し、保存会で継承している、と田村市のホームページにあった。演じる小学生のいない時期があったのだろう。昔は氏子の家の男子児童が担い手だったように記憶する。今は小学校の統廃合で他地区から通っている女子児童も獅子頭をかぶるそうだ。

町内ごとに繰り出した中学生のタル神輿は、たとえばわが「上町第一」は今年、中学生が2人しかおらず、参加を見送ったという。

団塊の世代が子どもだった60年前は、タル神輿担ぎは「長男の特権」だった。その理由が今回わかった。芋を洗うように子どもがいた。わが町内では、昭和23年組だけで13人(男6人、女7人)。「長男」に制限しないと、収拾がつかなかった、ということらしい。「青年団」とは別に「少年団」があったことを思い出す。

ほかの天狗、長獅子は――。「よく見ると天狗の高下駄は二枚歯である」。前は一枚歯だった。「天狗に扮したのは、下駄など履いたことのない農協の若い職員」だ。「長獅子の面々も酒に強いとはいえない三十歳前後のマイカー族。『連中、年々おとなしくなる』と先輩たちがぼやいていた」。

「長獅子は酔った勢いで何でもやってしまう。スナックになだれ込んで酒を飲む。魚屋の前では刺身の差し入れがあるまで動かない。ハレの日だけの特権だ。ところが、やたらと座り込むのは、すぐ息が切れるためらしい。そばに寄るとみんなゼーゼーやっている」。これはきっと今も変わらないだろう。いや、ゼーゼーがひどくなっているかもしれない。

人口が少ない町の、そのまた一地域の祭りだからこそ、少子化問題が早くから浮き彫りになった。地域の片隅は、その意味では、行政の“末端”ではなく、時代の“先端”だ。

もはや、「町内だけ」「長男だけ」「男だけ」といった古い観念では、時代に対応できない。外部との回路を開いて関係を結べる人、いわゆる「関係人口」を増やしながら、祭りや産業・暮らしを考えないといけない時代に入った。

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