県道とJR磐越東線をはさんで家がかたまっている。谷側の隠居から山側の“談話室”までは歩いて5分ほどだ。途中、谷側の空き地にフキノトウが群生していた=写真。人の土地だから写真を撮るだけにとどめたが、隠居の庭なら摘んでふきみそかてんぷらにする。線路敷にはセイヨウカラシナらしい菜の花が。ウグイスも「ほけきょ、ほけべきょ」と小声でさえずりの練習をしている。その年の初さえずりを、平地ではなく渓谷で聴くのは初めてだ。
総会は短時間で終わり、すぐ懇親会に移った。私は隠居に泊まらず街へ戻るので、ウーロン茶をすすりながらよもやま話を聴いた。やがてというか、いつものようにというべきか、話は“サバイバルグルメ”に移った。
いずれも東日本大震災の前、人によっては子どものころの記憶が披露された。「アナグマはうまい」「ハクビシンは肉がやわらかすぎてまずい、焼いたらいいかも」。イノシシは、震災後は原発事故のせいで食べることができない。しかし、各地に罠猟を続ける人がいる。「〇×さん(牛小川の人ではない)は、年間100頭も捕った」。びっくりして、思わず言葉が出た。「手にした報償金の額がすごいんじゃないの」
いわき市のホームページで今年度(2018年度)のイノシシ捕獲報償金制度を確かめたことがある。報償金は①「鳥獣捕獲等許可」の場合、1頭当たり1万2000円(別途、市鳥獣対策協議会から成獣・最大8000円、幼獣・最大1000円を交付)②「狩猟」による捕獲の場合は成獣2万円、幼獣1万3000円――を支給する、とあった。
対象頭数は2200頭で、農作物や農地への被害を防ぐために、罠猟免許取得者に箱罠の無料貸し出しも行っている。先日(3月15日)、対象頭数まで7頭を残して今年度の受付が終了した。予算がなくなった、ということでもある。
暮れの12月25日、磐城共立病院の敷地内に新病棟のいわき市医療センターが開院した。屋上にヘリポートがある。開院初日にさっそく使用された。
福島民報によると、小川町上平地内の山林で70代男性がイノシシにかまれ、両足に重傷を負った。男性は持っていた棒のようなものでイノシシを駆除した。夕刊のいわき民報には、消防の要請によって、福島県立医大からドクターヘリが飛来し、男性を浜通り南部の受け入れ病院である市医療センターへ運んだ、とあった。
私はそのとき、こんな想像をしてみた。人里に近い山中には、イノシシ捕獲用の箱罠がある。男性はそれを確かめに行った。行くと箱罠にかかっていて、「棒のようなもの」で仕留めようとしてけがをしたのではないか、と。
牛小川は、現場からはかなり離れている。が、住民は同じ小川地区のネットワークのなかで詳細を知った。「棒のようなもの」が何なのか、なんとなくわかった。地方自治体のホームページにも例示されている。箱を使わない罠猟の捕獲法のようだった。
足をはさまれたイノシシにかまれないよう、長い棒のさきについた輪っかで「鼻くくり」をする。次いで、もう一方の足をしばって動けないようにする。最後は、やはり長い棒状の電気とどめ刺しを使う。「棒のようなもの」とはこれらのことで、その手順が狂ったのかもしれない。命にかかわる大けがだったという。
さて、総会の集まりでは集落の守り神「春日様」の祭りの日を決める。渓谷がアカヤシオ(岩ツツジ)の花で彩られる日曜日、というのが慣例だ。今年(2019年)は4月14日に行われる。私も参拝・直会(なおらい)に参加する。
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