記事では、前半でホームページの新機能を紹介し、後半で総合図書館がレファレンス協同データベース事業への貢献で7年連続、国立国会図書館から礼状を贈られたことを伝えている。レファレンスサービスの一例として、「『蒸しかまど』(昔の炊飯器のようなもの)は、いわきで発明されたと聞いた。本当なのか知りたい」を取り上げていた。
「蒸しかまど」は高度経済成長期の前、阿武隈の山里では一般的な炊飯道具だった。私が子どものころ、火の番をさせられた。その思い出や、昔の平町が製造の中心地だったことなどを、拙ブログで書いた。知る人ぞ知る(ということは知らない人が圧倒的なのだが)、ローカルな道具だから、もしかして――。
さっそく図書館のホームページを開く。左側に「いわきの豆知識~レファレンス事例集~」がある。そこをクリックすると、<レファレンス協同データベース>があらわれる。最初のページの最下段に「蒸しかまど」が載っていた。
事例作成日は去年(2018年)の7月27日。質問を受けて調べ、次のように回答している(実際はもっと厳密な書き方だが)。
昭和7(1932)年1月13日付「常磐毎日新聞」に「小鍛式極東ムシカマド製造」の広告が載る。同10(1935)年6月29日付の同新聞に「平町特産のムシ竈製造」の記事が載る。広告から特許情報プラットフォームにあたると、昭和5(1930)年に製造主である経営者が特許・実用新案を出願し、認められたことがわかった。
結論は、「『蒸しかまど』は『いわき』で発明されたとは言えませんが、『いわき』で製品として特許をとり、製造販売されていました」。「発明」の有無については「未解決」で、「江戸時代や明治時代に使われていたことがわかる文献等は見つかりませんでした。どなたか、文献をご存知でしたら、教えてください」と呼びかけている。
常磐毎日新聞の広告と記事は、私が蒸しかまどに関してブログで取り上げた“古新聞”でもある。よくそこまでたどり着いたものだと思いつつ、「回答プロセス」を読むと、こうあった。――蒸しかまどについてさまざまな文献を調べたが、見つからなかった。グーグルで「むしかまど いわき」で検索し、ブログ「磐城蘭土紀行」から新聞の記事を知った。
「蒸しかまどはいわきで発明されたのかどうか」という質問も、了解できた。図書館が事例を作製する8日前、ブログで「蒸しかまど」に関してこんなことを書いた。「蒸しかまどは、平町で“発明”されたかどうかはともかく、昭和初期から高度経済成長期まで、燃料の安さと家事の簡素化で暮らしに貢献した」。質問者はこれに反応したらしい。
ネット情報は玉石混交とよくいわれる。私は現役のころは、地域新聞でコラムを書いていた。辞めてからは「ネットコラム」と称して、この10年以上、ほぼ毎日ブログを書いている。だから、たまにこうして“文献”的な扱いを受けるとうれしくなる。
いわき地域学會の仲間が、「考古学ジャーナル」2018年10月号に「地域史のなかの近代考古学――いわき市の事例から」というタイトルで、「暮らしの諸相」のなかで蒸しかまどを取り上げていた。末尾の参考文献のひとつに拙ブログの「『平町特産』の蒸しかまど」が載っている。これも、ブログを文献として扱ってくれた事例で、ありがたく思っている。
ブログでは紹介ずみだが、その後知った蒸しかまど情報を追加しておく。昭和13(1938)年1月27日付磐城新聞の広告で、当時、いわきを代表する問屋、釜屋商店が写真付きで「石山式 石綿ムシカマド」の広告を載せている。
きょう(3月21日)は春分の日。午前中、カミサンの実家へ行き、昔、蒸しかまどでご飯を炊いた両親の墓に参って、蒸しかまどがレファレンス事例に加えられたことを報告しよう。
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