2019年3月7日木曜日

イノシシは今年の干支だが

夏井川渓谷の集落を夜な夜なイノシシがのし歩く。ときに、民家の周辺に荒々しい“ラッセル痕”を残す。イノシシは亥(い)。今年(2019年)の干支(えと)だが、実際のふるまいはなかなかきついものがある。
電力会社が渓谷にある隠居の電力メーターを更新するというので、きのう(3月6日)朝、出かけた。ブレーカーを落として作業に立ち会うこと十数分。円盤が回るアナログ式から、デジタル式のスマートメーターに替わった。

少し土いじりをしてから隠居を離れた。磐越東線の江田駅前を過ぎ、踏切を渡ると――。山側の高い土手がほじくり返されていた=写真。ここは前にも激しく広くほじくり返されたことがある。拙ブログで確かめると、原発震災からおよそ1年1カ月後、2012年4月のことだった。

ついでにいうと――。2013年3月。原発震災後、隠居の庭にある菜園では、三春ネギ以外は栽培を休み、生ごみを埋めるだけにしていた。菜園の一角にスイセンを植えたとき、プラスチックの半円の柵をかけた。その柵がふっとんでひっくり返るほど、地面がほじくり返されていた。ネギは無事だった。

2014年7月には、隠居の隣、錦展望台の駐車場の一部が重機で掘り起こされたように凸凹になっていた。

隠居の下にヨシ原が広がる。夏には2メートルほどに生長したヨシで覆われる。2017年5月、その一角が畳2枚分くらいほじくり返された。頑丈な吻(ふん)で土を掘り、石を飛ばしてミミズをあさったようだ。ヨシの地下茎が切断されてむき出しになっていた。

イノシシは、複数の群れが同じ地域を利用しているらしい。寿命は長くて10年というから、代替わりをしながら山里を転々としているわけだ。

原発震災前、渓谷の小集落ではイノシシが極上のごちそうだった。「しし鍋」をつつく会に誘われたこともある。震災からまる8年がたつが、イノシシの肉はまだ口にできない。

イノシシやキノコを食べられない山里の暮らしはおかしい。だれがそうしたのか。うらみつらみを胸の中にためこんで、それをエネルギーにしなければ――イノシシのラッセル痕を見るたびに、ついそんなことを思う。

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