ちょうど1年前のきょう(10月13日)、私の住む平・中神谷地区の上流、夏井川沿いの幕ノ内や中塩、下平窪地区では風景が一変していた。「朝おきたら、私の家の前が湖になっていた。私の家も、学校の校庭も、町も、変わってしまった」。先日紹介した冊子『てこてこ~川とともに生きる 令和元年台風19号から1年の歩み~』の巻頭写真に重ねて紹介された平四小4年生の作文の冒頭部分だ。
これも10月の自然史のひとこま――。先週の木曜日(10月8日)朝、猪苗代湖に今シーズン最初のハクチョウが飛来した。ということは、1週間~10日後の10月15~18日ごろに、いわき市の夏井川に姿を現すはずだ。
去年(2019年)、猪苗代湖には10月7日に飛来した。10日後の17日前後にいわきに現れるはずと踏んでいたら、そのとおりになった。同日、中神谷の夏井川で2羽が羽を休めていた。
いわきの平地の夏井川では、上流から小川・三島、平・平窪、同・塩の3カ所で、ハクチョウが越冬する。しかし、去年は10月12~13日、平窪を中心に台風19号の被害が広がった。ハクチョウが飛来したのはその4日後だ。ハクチョウの目には、流域の惨状はどう映ったろう。
今夏、下平窪~幕ノ内間の夏井川左岸の堤防を通ったら、右岸の川中子(かわなご=好間)では河川敷の樹木やヤブがきれいに刈り払われ=写真、左岸の中塩では土砂の除去工事が行われていた。道端の立て看には「河川災害復旧助成工事(掘削工)」とあった。上流左岸の下平窪、下流左岸の鎌田でも土砂の除去工事が行われている。
川が運んで来る土砂の量はすさまじい。中神谷字大年地内の河川敷を通るサイクリングロードには、台風19号が去ったあと、1メートル近い土砂が堆積した。一晩でそうなる。
中神谷の対岸、山崎地区では10年以上前、河川拡幅工事が行われた。竣工(しゅんこう)したばかりのころは、サッカー場が二つもできるような広さだったが、大水のたびに土砂が積もり、草が茂って、岸辺にはヤナギが繁茂した。かえって前より川幅が狭くなった感じがする。
水害後1年の話に戻る。『てこてこ――』によると、下平窪地区では国道399号から一歩中に入ると、空き家や更地が目立つ。解体中の家も多い。「この地区だけで約600戸が取り壊されることが決まっている」そうだ。
被災半月後に初めて平窪地区を通った。そのときの田んぼの様子などを拙ブログから抜粋する。
――日曜日(10月27日)午後、台風19号の襲来以後、初めていつもの田んぼ道(平・神谷~中塩~平窪)から国道399号(県道小野四倉線)に抜けて、夏井川渓谷の隠居へ出かけた。行く先々で異様な光景を目にした。
中塩の道沿いに、知人の娘さんの家がある。台風で床上浸水をした。3人で片付けをしていた。片付けの邪魔になってはまずい――気にしながら顔を出した。1階はほぼ水没状態だった。「(見舞いに)来てくれただけでうれしい」。そういってくれる。
上平窪に入ると、まだ稲刈りを終えていなかった田んぼに、どこからかボートが流れ着いていた。
帰りは夏井川の右岸域に渡り、平・赤井の友人宅を見舞った。台風で浸水すると、すぐ仲間が片付けに駆けつけた。水に浸かった家具は廃棄し、室内をきれいにしてくれた。おおむね浸水前と同じような環境を取り戻していた。絆(きずな)の力だ。
中平窪の夏井川に渡ってきたハクチョウが田んぼから川へ戻る時刻だった。閼伽井嶽をバックに、西方の田んぼからハクチョウが3羽、4羽と連れ立って飛んで来る――。
中塩の家は、今は解体されて更地になり、「売地」の看板が立っている。どこへ行ってもキンモクセイの香りがする。街へ行けば必ず夏井川の堤防を通る。ハクチョウ観察のカウントダウンが始まった。
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