夏井川渓谷の隠居には最初、物置がなかった。家庭菜園を始めたら、農具がどんどん増えた。農具や肥料などの置き場が必要になったので、風呂場に接続して物置を建てた。不用になった洗濯機その他を収納しているうちに、足の踏み場もなくなった。あまりの乱雑さにカミサンが“宣言”した。「物置の中を片づけるからね!」
その直後、後輩からパソコン経由で音声が届いた。初めて電話のように話した。隠居の物置にある肥料は整理した方がいい――。物置を片づけるつもりでいたので、タイミングがよすぎる。なぜ? 自分の家の物置でボヤ騒ぎがおきたのだという。
フェイスブックのメッセージに新聞記事が添付されていた。後輩の家の「敷地内にある木造の物置小屋出入り口付近から火を出し、トタン板の壁面の一部を焼いた」。同じ日の夕刊いわき民報にもベタ記事が載った=写真。
その翌日、本人がやって来た。新聞記事と本人の“供述”は微妙に違う。夕方、農作業を終えて帰宅したら、物置小屋の壁が一部焦げていた。警察と消防に、放火の線も含めて出火原因の検証をしてもらった。肥料の酸化などを含めた化学反応に伴う自然発火の可能性が大きい、ということだった。
それで、少しだが肥料を積み重ねているわが隠居の物置の様子を思い出して、自然発火の心配もあるから注意するように――と連絡してきたのだった。
後輩は工業化学を学んだ。物置には「使い残し化学肥料(混合はしていない)が、少量まとめて数年放置してあり、若干の枯葉・草も袋を介して接していた」。それが、ボヤを引き起こした原因と関係があるかもしれない、という。「にわか農夫とはいえ、化学屋のはしくれとして不覚をとってしまった(誠に残念)」とコメントしていた。
後輩の忠告に従って、今度、夫婦で隠居へ行ったときには物置の中を片づける。その前に、三春ネギの種まきがある。きのう(10月10日)は雨で断念した。きょうは午後から別の用事がある。けさ、朝めし前に行って来るか、あした出かけるか、決めかねている。いずれにしろ、カミサンと一緒に物置を整理するのは次の日曜日だ。
にしても――。「化学屋のはしくれ」だけでなく、元「ブンヤのはしくれ」にも、自然発火のメカニズムは気になる、いや興味がある、といったら怒られるか。
燃えかす(灰)はきれいだった、後輩が見たとき、灰の内部は熱を持っていた。火も灰の中に残っていた。そうした状況も含めて、内部からの自然発火と推定されたようだ。後輩はさらに、灰の分析を消防に依頼した。
なぜ肥料の内部から火が出たのか。これが科学的に分析できれば、プロの農家だけでなく、私のような家庭菜園のアマチュアにも「警鐘」になる。今まで知られていなかった自然発火の事例ということになれば、同様の火災を防ぐ「教訓」にもなるだろう。
今年(2020年)8月初旬、レバノンで大規模爆発が起きた。農業用肥料や爆薬の原料になる硝酸アンモニウムに何らかの原因で引火したのではないか、といわれている。事故の大小はあるが、後輩の物置のボヤも原理としては同じなのかもしれない。
0 件のコメント:
コメントを投稿