日曜日(10月18日)の夏井川渓谷――。JR磐越東線江田駅前を通りかかると、県道沿いの空き地に四角いパイプの骨組みができていた=写真上。上にブルーシートを張れば屋根になる。田村郡小野町のNさんが紅葉の時期に設ける直売所だ。
私が夏井川渓谷の隠居へ通い始めてから二十数年になる。Nさんもまた同じように、江田駅前で曲がりネギや長芋、ゴボウを直売してきた。パイプの骨組みは、1週間前の月曜日(10月12日)にはなかったから、前日の土曜日にでも組み立てたのだろう。
ネギはたぶん、私が隠居で栽培している三春ネギと同じ品種だ。甘くてやわらかい。ところが、3年前からこのネギが並ばなくなった。Nさんは会社勤め、ネギ栽培の主力はNさんの両親だった。父親が入院したり、母親が腰を痛めたりして、直売所へ出すほどの量が栽培できなくなったらしい。
それが今も影響しているのだろうか。夏井川流域が台風被害に遭った去年(2019年)は、とうとうNさんの顔を見ないで終わった。今年は、10月下旬ではなく、中旬にパイプが組み立てられた。「やる気十分」と感じたのだが、Nさんにはたまたま組み立てが10月中旬になっただけなのだろう。
そんなことを思い浮かべながら隠居に着くと、すぐ物置の片付けが始まった。後輩の家の物置が、中に置いてあった古い肥料が原因で自然発火をした。ボヤで済んだが、隠居の物置の中を見ている後輩から「要注意」の連絡がきた。農具や肥料などが乱雑に置かれたままだ。カミサンから「片付ける!」と宣言されていたこともあって、「あとで」「あとで」と先延ばしすることができなくなった。
カミサンが物置の中からどんどんモノを外に出す=写真下。いやあ、出てくるわ、出てくるわ。たたんだ段ボール箱、古い肥料と空き袋、発泡スチロール箱に木片、古新聞……。
物置の片付けが終わってから、ようやく土いじりを始める。隣の小集落に住む友達からネギの種をもらった。自分の種はすでにまき終えた。苗床を増やしてこの種をまいた。渓谷の半住人になって以来、まずは土いじり、景色はそれから――が習慣化した。行楽客ではない。日曜日だけだが、土地の暮らしと結びついた時間を過ごす。それが、地元の人たちとの交流にもつながっている。
テレビがカエデの紅葉情報を流すようになった。夏井川渓谷のカエデはまだ「青葉」のままだ。
同渓谷の“定点観測”をしていて、紅葉には二つあることがわかった。「前期の紅葉」と「後期の紅葉」、あるいは「非カエデ」と「カエデ」だ。全体の紅葉を楽しむなら10月の非カエデ(広葉樹一般)、顕微鏡でのぞくようにピンポイントで紅葉を楽しむなら11月のカエデだろう。緑から黄緑、黄色、淡い朱色へと、自然が織りなす色彩が日を追って鮮やかになってきた。
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