きょう(1月10日)のブログは、実はいわき民報の元日号に掲載したものです。
元日号は年末に印刷され、大みそかの日中、一日早く配達されます。戦前から続く地域新聞の“習慣”です。
コロナ禍をきっかけに、記事補充の一環としてブログの転載が始まりました。その延長で、暮れに元日号の原稿を――と後輩から頼まれたのです。活字からブログへ、初めて「逆転載」をします。
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俳句の世界では、正月三が日に降る雨や雪を「御降(おさがり)」という。新年の季語だ。
出羽の国に生まれ、磐城平の專称寺で修行し、幕末の江戸で俳諧宗匠として鳴らした俳僧に、一具庵一具(1781~1853年)がいる。
故郷の山形県村山市で村川幹太郎編『俳人一具全集』(同全集刊行会)が発刊されたのは昭和41(1966)年。知人から全集の恵贈を受け、何度も読み返しているうちに「御降」という季語を知った。
戸にさわる御降聞(い)て起(き)にけり
御降りや西丸下のしめるまで
御降や小袖をしまぬ歩行(あるき)ぶり
城山や御降ながら暮(れ)かゝる
きのうの続きの日の出ではなく、年が改まった最初の日の出を「初日の出」と言うように、正月三が日の雨や雪は、やはり特別の雨や雪、つまりは「御降」になる。
晴れても、雨が降っても、雪が降っても、要はどっちに転んでも正月はめでたいのだと思いたいが、現実はそう単純ではない。
すぐ日常が始まる。今年(2024年)も1月4日には「初仕事」が控えている。早朝、家の前のごみ集積所にネットを出さないといけない。
年末年始にたまった「燃やすごみ」がどっと出る。「ふだんの一日」のスタートとともに、カラスとの長い闘いがまた始まる。
ごみ袋のない年末年始、姿を消していたカラスがどこからともなく現れる。去年までの例だが、正月早々、ごみネットからあふれたごみ袋が破られ、歩道に生ごみが散乱していたことがある。
カラスはいつも人間の思惑を超えて行動する。カラスに負けるわけにはいかない、と思いつつも、カラスの知恵の進化(深化)には感心させられる。
それに比べたら、人間と距離を取って暮らす水辺のハクチョウはかわいいものだ。朝は主に7時以降、夕方は主に4時以降、わが家の上空を「コー、コー」と鳴きながら通過する。
たまたまその時間帯に夏井川の堤防を通ると、飛び立ったり舞い降りたりする姿を見ることができる=写真。
集合しているところを撮るなら、小川町の三島だろう。日曜日になると、橋の上流右岸に家族連れがやって来る。河川敷に上がって人間のそばに群れるハクチョウもいる。
元日に初日の出を拝むように、初バードウオッチングをするのもいい。私はちょうど10年前の1月4日、わが家の庭でこれを経験した。
縁起のいい初夢は「一富士二鷹三茄子(いちふじにたかさんなすび)」。富士と茄子はともかく、鷹が向こうからやって来た。
わが家の西隣のアパート駐車場にアンテナが立っている。「キキキキ」。鳥が鋭い声で鳴いて、アンテナに止まった。
カラスよりは小さいが、ハトよりは大きい。チョウゲンボウだった。初夢どころか、その年最初のバードウオッチングが鷹とは、なんとも爽快な気分になった。
今年もまた人間だけではなく、鳥や植物やキノコたちとの出合いを楽しみに生きていこうと思う。
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