いわき市小川町の関場~上平地内で、国道399号(県道小野四倉線)と夏井川が並走する。
対岸の三島へ渡るには三島橋を利用する。その橋のそばに磐城小川江筋の取水堰(ぜき)がある。
夏井川のカーブを利用した多段式、木工沈床の斜め堰で、七段の白い水の調べが美しい。今からざっと350年前の江戸時代前期に築造された。
この堰があるために、すぐ上流は流れが緩やかになっている。ここにいつからか、ハクチョウが飛来して越冬するようになった。
34年前の春、日本の鳥類学者が北海道のクッチャロ湖でコハクチョウに送信機を付け、北へ帰るコースを調べた。
それによると、コハクチョウはサハリンへ渡り、さらにシベリアの北極海に注ぐ巨大河川「コリマ川」を北上して河口に到達し、やや北東部に移ったところで通信が途絶えた。
そこは「大小何千もの湖沼からなるツンドラ地帯の一大湿地」、つまりコハクチョウの繁殖地だった。
ハクチョウは水鳥なので、湖沼や流れの緩やかな河川を選んで羽を休める。「白鳥の湖」というバレエ音楽があるように、ハクチョウと湖は切り離せない。
三島の夏井川も、流れはあるが緩やかで浅い。このため、「ふるさとの湖沼」に近い安心感をハクチョウに与えるのだろう。
夏井川渓谷にある隠居への行き帰り、ここを通る。で、必ず車を減速して、チラッと川面を眺める。
1月7日の日曜日。2週間ぶりに三島のハクチョウをウオッチングした。右岸の河川敷には、このところ毎日曜日、家族連れが現れ、ハクチョウたちにえさをやっている。
午後もまた、ここで車を減速する。7日も同様だった。右岸には複数の家族連れがいた。それを見ながら、ふと思い出したことがある。
年末に小川の「白鳥おばさん」から電話がかかってきた。「エレンが戻ってきた。ずっと見てきたので間違いない」
エレンとは、3年前の春、翼をけがして三島に残留したコハクチョウのことだ。このハクチョウに「白鳥おばさん」が「エレン」と名付けて、えさをやり続けた。
その後、エレンは大水で下流に流されたが、やがて飛べるようになって北へ帰ったと、「白鳥おばさん」から聞いた。
そして、今シーズン。去年(2023年)の10月17日、ハクチョウがわが生活圏に現れた。それを告げるブログに「エレンは、今はどこにいるのだろう」と書いた。
そのブログがいわき民報に転載された。「(新聞に)エレンはどこにいるんだろう、って書いてあったから」。返答を兼ねて電話をくれたのだった。
三島橋を渡って車を止め、河川敷に出ると、若い親子がハクチョウやカモたちにパンをちぎって与えていた=写真。
エレンはもちろん、どこにいるかわからなかったが、オナガガモやマガモも間近に見て、久しぶりに心が躍った。
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