2024年1月11日木曜日

タコの刺し身

                      
 暮れに、氷詰めにされた「ゆでだこ」が手に入った=写真。下の子が持って来た。

 日曜日の夜は刺し身と決めている。よりによって大みそかがそうだった。いつもの魚屋さんは休まずに店を開いているはず。しかし……。目の前に、刺し身になる材料がある。

 カミサンは、歯が悪いので、たこ刺しは食べない。義弟も食べない。結局、大みそかと松の内は一人でたこ刺しを食べ続けた。頭は? 「いもたこ」になって出てきた。

 毎晩、たこ刺しを口にしているうちに、記憶の底で何かがはじけたようだった。

夜、海岸、いも……。あえて文字にしようとすればそんなところだが、具体的な映像を結ぶまでには至らない。ただ脈略もなく、「夜、海岸、いも、たこ」が脳内でうごめいている。

それからしばらくして、漫画に出てきたのではなかったか、そんな記憶のかけらが新しく浮上した。

 元日に起きた能登半島地震は、いまだに被害の全容が明らかになっていない。テレビが伝える現地の状況を耳に入れながら、パソコンで「たこ、いも、漫画」をキーワードに検索を続けた。

 埋もれていた記憶を再生する作業には違いないのだが、何時間たっても手がかりは得られない。

 そうこうしているうちに、確か作家が原作の漫画だったような気がする、しかも生物に詳しい……、そんな記憶の断片も浮かんできた。

 ではと、「日本の漫画原作者」で検索し、次に「日本の作家」で名前をスクロールすると、マ行でヒットした。光瀬龍(みつせ・りゅう=1928~99年)、これだ!

龍は今年(2024年)の干支(えと)だが、それは偶然として、もやもやした頭に具体的な名前が浮かべば、あとは簡単だ。

「光瀬龍」で検索すると、すぐ漫画のタイトルがわかった。「ロン先生の虫眼鏡」(画・加藤唯史)。「ロン先生」(作家)による「博物誌」とでもいうべき内容の作品だった。

 若いころから、休日の楽しみとして「森巡り」を習慣にしていた。この漫画(単行本)を夢中になって読んだのは、確か30代後半か40代前半だ。

毎週末、夏井川渓谷の隠居へ通うようになったのは、阪神・淡路大震災が起きた年の初夏で、46歳だった。それを目安にすると、ロン先生に出合ったのは渓谷へ通う前ではなかったろうか。

 漫画の単行本を買った覚えはない。上の子が大きくなって、漫画を買って読むようになった。それを借りて読んだのだろう。

 で、「ロン先生の虫眼鏡」に出てくるタコだが――。海岸の近くにサツマイモの畑がある。その畑の作物がなくなる。犯人は? 酔っ払いが見たのは、人間ではなく海からあがってきたタコだった。いや、現実には人間だろう、そう思わせる流れだったような気がする。

 「いもたこ」とはよく言ったもので、それまでは「里芋とたこ」の組み合わせしか頭になかったが、漫画を読んで以来、いもはサツマイモ、あるいはジャガイモでもOK、という思いに変わった。

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