2010年12月3日金曜日

落ち葉の色


少しずつ「積ん読」本のチェックを続けている。捨てるのではない。読み直そうという気になったのだ。何日かおきにそんなことをしている。私が買った本は、一部を除いてわが家に埋没している。1階、2階、離れ、階段……。息子に片づけられたり、カミサンが物を置いたりして、寝室と階段を除いてほとんど本が見えなくなった。

そんな状態だから書斎などあるわけがない。いつも茶の間でキーボードをたたいている。でも、もう限界だ。本を救出しなくては、と思い立ったのだった。

すると、ある本に昔のメモが挟まっていた。1992年11月15日の日付がある。18年前ということは、夏井川渓谷の無量庵へ通い始める前だ。わが家の近くに石森山がある。そこへ足しげく通っていた。石森山で紅葉の色を“取材”したときのメモらしい。

本の題名は忘れたが、色の事典を携えていたはずだ。いちいち事典と照らし合わせて、紅葉あるいは黄葉に近い色を書き込んだ――そんなことを思い出した。

たとえば、ヤマボウシ・ソメイヨシノ・カエデ=海老(えび)色、クヌギ=櫨(はじ)色、ニシキギ=緋(ひ)色、ユリノキ=黄金色、といった具合。草の色も書き留めてある。「草の一種」(名前を知らないから)として、バーミリオン、深紅、赤、茜色、雄黄(ゆうおう)色……。

個別・具体の即物精神、つまり「事実」に徹しようとすれば、そういうことが必要になる。40代前半の私は自然に学ぶのが楽しかった(今も楽しい)。

――5日前、夏井川渓谷の無量庵へ出かけた折、濡れ縁の浅鉢にどこからかカエデが飛んできて水に沈んでいた。カミサンが「きれい」といって、私のカメラで写真を撮った。それは削除して撮りなおしたのがこれ=写真

瓦の葺き替え工事を頼んだのはいいが、雨樋の工事がいい加減だったために2カ所から水が垂れる。雨のときはひどい。霜も朝日に照らされると、チッタン、チッタンやる。で、雨垂れ対策に濡れ縁にバケツと浅鉢を置いてあるのだ。

その浅鉢に着水した鮮やかなカエデの葉だ。昔のメモが出てきたときに、ふと5日前のカエデの葉を思いだした。人間はいかに自然からインスピレーションを受けていることか。そんなことをあらためて思ったのだった。

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