何年前だろう。いわき市の「産業祭」で二、三個、実のなっている温州ミカンの苗木を買い、夏井川渓谷の無量庵の庭に植えた。
同じ集落のTさんが、ユズは福島市の信夫山が北限と聞いて、牛小川で実をならせることに挑戦した。実がなった。いわきの平地からみたら、夏井川流域で一番標高が高く、寒いところにあるユズかもしれない。
Tさんの「遊び心」に刺激されて、ともかく温州ミカンの苗木を植えてみよう、そう思って実行したのだが、見事に失敗した。実がならない。常緑の葉も真冬には“風邪”を引いて色が落ちる。
思惑通りにはいかない。が、仮に実がなるようなことがあれば、地球温暖化が進んだ「あかし」になる。無量庵のミカンの木はそのためのセンサーだ――と開き直って、実がなるのをあきらめた。
そんなところへ、“久之浜ミカン”が届いた=
写真。元同僚が栽培していて、前にも一度、もらった記憶がある。やや酸味があるものの、甘くておいしい。皮はしっかりしている。固くて厚い。
久之浜はいわき市の海岸部にある。それで暖かい。ミカンがなる。ミカンはいわきの北の双葉郡でもとれる。いわきの平地では、今やミカンは普通の柑橘(かんきつ)類だ。
“久之浜ミカン”は無農薬。食べたあとは皮を捨てずにとっておく。天日に干して、白菜を漬けるときに、風味用として加えるのだ。ユズとはまた違った上品な香りになる。
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