夏井川渓谷は、広葉樹の葉が散ってすっかり景色が変わった。道路から谷底がよく見える。対岸の急斜面も、ごつごつした“岩肌”をさらけだしている。
無量庵の玄関わきにあるウワミズザクラ、ホオノキ、エゴノキ、コバノトネリコ、カエデたちも、同じように冬の眠りに入った。溪谷に自生する木々たちだが、何本かは苗木のころに植えられたに違いない。密生しているからだ。
庭木のあるスペースは八畳間くらいだろうか。最後に葉を落とすカエデが地面を覆っていたころ、ひっそりとフユノハナワラビが顔を出していた=
写真。
フユノハナワラビは冬に生長する。夏はじっと地中で眠っていて、秋になると芽を出す。落葉樹の庭は、夏は葉に覆われていてフユノハナワラビの寝床になり、冬は葉が落ちて日が差し込み、フユノハナワラビの温床になる。
ときどき、このフユノハナワラビと「会話」する。といっても、じっと見ているだけだが。なぜ厳しい冬を選んで生きるのか。――答えはない、いや、いらない。そこにフユノハナワラビがある、と思うだけで少し心が温まる。
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