日曜日(9月24日)の夕方、いつもの魚屋さんへ行くと、「きょうのはそれなりの味です」という。カツオの刺し身のことだ。食べられるが、味は落ちる――そう顔に書いてある。
いつもの量(一筋=魚体の4分の1)を切って皿に盛り、新聞紙で包みながら、「カネはとれないです」という。前にも一度、そんなことがあった。
「カツオはさばいてみないとわからない」「きょうのはいいですよ」「吉田さんの分をとっておきました」。生のカツオが入荷する限りは、毎日曜日、刺し身を食べる。今年は早かった。小名浜に水揚げされる前から食べている。
それなりの味ってどんな味? 晩酌をしながら、カツ刺し=写真=をつつく。なるほど。口に入れると少しねちゃっとして硬い。後味が悪い。赤い肌が電灯の光を反射して金緑色をしているのもある。鮮度が落ちている証拠だ。半分を残して食べるのをやめる。翌日、残りをカミサンがにんにく醤油にひたして油で揚げた。
それなりの味に後退したわけは? 土曜日(23日=秋分の日)・日曜日と連休になった。通常の日曜日だと、朝にカツオが入る。連休でそれがなかった。一日長く冷蔵庫に入っていたので鮮度が落ちた、ということなのだろう。
油で揚げたカツオは、いわば「ひたし揚げ」。『いわき市伝統郷土食調査報告書』(平成7年3月刊)によると、いわきのハマにはカツオの「焼きびたし」がある。こちらはまず、カツオの切り身を火で焼く。冷めたら、鍋に入れて沸騰させた醤油を冷ます。それに焼いた切り身をつける、というものだ。
ハマでは「焼きびたし」、同じいわきでも内陸は「ひたし揚げ」と違いがある。極端な話、ハマの食文化エリアは狭い。
調査報告書の冒頭に、ハマの人間にはサンマ・カツオ・マンボウなどの「料理はごく当たり前の普通の料理である。ところが、ほんの数キロしか離れていない地区に行くと、そんな料理は食べたことがないという例がたくさんあった」とある。伝統のハマ料理を一般化するには、ちょっと離れた内陸の視点が必要になる。
おっと、忘れていた。カツ刺しをただでもらって帰るわけにはいかない。目の前にパック入りの干物があった。カミサンが名前を聞くと、ニクモチ(カレイの一種のミギガレイ)だという。値段は1000円。カツ刺しの翌朝、焼いて食べたらクセがない。焼き鳥のレバーのような食感も味わえた。うまかった。
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