2017年9月7日木曜日

いわむらかずお絵本原画展

 日曜日(9月3日)の午後、夏井川渓谷の隠居からの帰り、いわき市立草野心平記念文学館へ足を運んだ。夏の企画「いわむらかずお絵本原画展」が9月24日まで開かれている。ところが、どう勘違いしたのか、カミサンが「きょうが最終日だから」と文学館行きを催促した。しかたない。予定を変更して立ち寄ることにした。
 午後3時半過ぎに着くと、駐車場がほぼ満パイだった。こんなことはめったにない。なにかイベントがあったのか。館内正面のアトリウムロビーで東京電機大学グリークラブのコンサートが、午後3時から1時間の予定で開かれていた=写真。アトリウムロビーが人で埋まっているのを見るのは久しぶりだ。迫力のある若者の歌声に聞きほれた。

 コンサートが終わって、絵本原画が飾られている企画展示室をのぞく。森で暮らす三世代の野ネズミの大家族を中心に、植物やキノコたちが地べたに近い視線で描かれている。ときどき隠居の庭や、対岸の森で地べたをなめるように観察する身には、親しく懐かしい世界だ。

 いわむらかずお(1939年~)の代表作は「14ひきのシリーズ」だという。「14ひき」は野ネズミの大家族(おとうさん、おかあさん、おじいさん、おばあさん、そして10匹の子どもたち)のことだろう。フランス、ドイツ、台湾などでも翻訳・出版されている国際的な絵本作家だとは知らなかった。
 
 それよりなにより、「14ひきのシリーズ」の『14ひきのあきまつり』にはキノコがたくさん登場する。カワラタケ、クリタケ、アイタケ、ベニテングタケ、シシタケ……。森では「キノコのまつり」が行われていた。キノコを担ぐキノコたち、それを見物するキノコたち、そのまつりに遭遇した野ネズミたち。どこにどんなキノコが描かれているのか、探す楽しみもある。つい絵本を買ってしまった。

 いわむらかずおの絵本は手に取ったかもしれないが、作者名も作品名も記憶には残っていなかった。カミサンの勘違いがなかったら、絵本原画展はたぶん見ないで終わった。
 
 文学館のホームページには、「家族みんなで取り囲む、ささやかでも温もりに満ちた食卓は、私たちに大切な何かを気づかせてくれる」とある。『14ひきのあきまつり』も、食卓を囲んで秋の森の恵みをいただくシーンで終わっている。
 
 作者は雑木林を歩くのを無上の喜びとしているようだ。栃木県益子町在住で畑を耕しながら創作活動を続けているというから、野ネズミもキノコも身近な存在なのだろう。そこから独自の絵本世界が生まれた。

0 件のコメント: