2019年1月24日木曜日

いわきの雛の吊るし飾り展

いわき市勿来関(なこそのせき)文学歴史館で3月19日まで、企画展「いわきの雛(ひな)の吊(つる)し飾り――塩屋呉服店の『おつるし物』」が開かれている=写真(図録表紙)。
 塩屋呉服店は、今はない。平を代表する豪商・塩屋の分家で、明治6(1873)年から大正15(1926)年まで、呉服店を営業した。

 その子孫の民俗学者・山崎祐子さんが、塩屋呉服店の暮らしと年中行事を2冊の本にまとめた。1冊は『明治・大正 商家の暮らし』(岩田書院、1999年)、もう1冊は編著『雛の吊るし飾り』(三弥井書店、2007年)。

前著は、山村暮鳥その他、大正ロマンを生きた平の詩人たちの足跡をたどるうえでおおいに参考になる、私の「座右の書」だ。「吊るし飾り」の本は、カミサンのアッシー君をしているうちに、興味がわいて読んだ。おかげで、今、メディアで取り上げられる「吊るし雛」とは、分けて考えられるようになった。吊るし雛は、いわきの歴史のなかでは新しいイベントだ。

図録からピックアップする。①山崎家の吊るし飾りは全部で97点、うち77店は押し絵②明治から大正初期にかけてつくられた③製作者は10人いて、5人は従業員――。

震災前の2008年4月、好間のギャラリー「木もれび」で「押し絵」の作品展を見た。カミサンの知り合いの「ぴょんぴょん堂」さん(平)がお弟子さんと開いた。

当時の拙ブログによると、押し絵はちりめん細工の一種。絹織物ならではのやわらかな質感、豊かな色と紋様を利用して、作品をつくる。「ぴょんぴょん堂」さんの創作の原点という、生家(西村屋薬局)の「雛のつるし飾り」が展示されていた。

芽吹いて間もないヤナギの枝に、動物や兵士や、江戸時代の若者や娘や、やっこなどの押し絵がつるされて飾ってあった。平の商家では昔、仕事を終えた夜、人が集まって雛祭りに飾る押し絵をつくったという。立派な雛段がセットされたわきに、花瓶にヤナギの木を生け、枝に押し絵をつるした。

塩屋呉服店の吊るし飾りも、同じようにしてつくられた。展示されたものを見ると、みな「押し絵」だ。そこが、今の吊るし雛とは違う。

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