冬至から1カ月弱。心なしか日脚がのびてきたが、来週あたりからいわきでも厳寒期に入る。きのう(1月15日)は小名浜で最低気温が氷点下2.8度だった。しばらくは「光の春」と「寒さの冬」の綱引きが続く。
図書館から新着図書=永澤義嗣『気象予報と防災――予報官の道』(中公新書、2018年)を借りて読んでいる。「光の春」の由来が記されていた。ロシア語からきているという。「気象キャスター」で知られた元鹿児島地方気象台長・倉嶋厚さんが日本に紹介した。ロシアに限らず、「厳冬期、伸びはじめた日あしに最初に春の兆しを感じる2月頃の季節感をよく表している」言葉だ。
この言葉はすっかり日本人の暮らしのなかに溶け込み、俳句の季語にもなった。私も毎年、年明けから春がくるまで、冒頭のように綱引きに例えて使う。まだ小名浜測候所に職員が常駐していたころ、職場に届く広報資料を愛読しているなかで「光の春」を知り、「寒さの冬」との綱引きを知ったように記憶している。「熱帯夜」も倉嶋さんの造語だそうだ。
本には気象予報官の仕事や天気予報の実際などがつづられている。予報はなによりも言葉の「定義」から始まる。その定義(言葉)と、一般市民の言語感覚がずれている場合もある。
基本の基本は、朝や日中、夜といった時間の定義と呼び方だろう。気象庁は一日24時間を3時間ごとに8区分する。その呼び方は、0~3時:未明、3~6時:明け方、6~9時:朝、9~12時:昼前(11~13時:昼頃)、12~15時:昼過ぎ、15~18時:夕方、18~21時:夜のはじめ頃、21~24時:夜遅く、となる。日中は9~18時、夜は18~24時だ。
真夜中、日が替わっても暗いうちは「未明」、明るくなりかけたら「明け方」とざっくり認識している人間からすると、明け方が3時から、夕方が15時からというのは、なじみにくい。本には書いてないが、「西の風」と「西よりの風」の区別も難しい。「西より」は「西から」ではなく、北西から南西まで45度の角度内で風がばらついているときに、おおむね「西に寄った」風という意味で使うらしい。
で、さっそくきのう「夜のはじめ頃」の18時台に、ローカルテレビの気象情報をチェックした。NHKは8区分に従った予報、TUFは未明と明け方を省略した6区分の予報だった。なるほど、この本を咀嚼すれば気象情報番組を“批評”することもできそうだ。
本はまだ半分しか読んでいない。が、いわきにも関係するくだりを紹介する。
「天気を支配する気象現象のエネルギー源は太陽である。地球が太陽から受け取るエネルギー量は緯度によって差があり、季節によっても異なる。このため地球上では、エネルギー分布にアンバランスが生じている。このアンバランスを解消するために起きる現象こそ『気象』にほかならない。(略)収支がバランスする緯度は(略)30度から40度あたりである」
いわき市は北緯37度あたりに位置している。気象上のエネルギー収支が安定している地域だ。住みやすいワケがこれか。
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