今は福島市で暮らす若い知人が年末、フェイスブックで「アレッポのせっけん」に関するAFP(フランス通信社)の記事をシェアしていた=写真。「がれきに漂うせっけんの香り、内戦で閉鎖の工房が再開 アレッポ(再掲)」とタイトルにあった。
記事は去年(2019年)5月に配信された。「再掲」とあるのは、およそ半年がたってまた発信したからだろう。アレッポのせっけんを愛用している人間にとっては朗報だった。
シリア内戦が始まった翌年(2012年)、反体制派がアレッポを掌握し、「2016年にロシア軍の支援を受けた政府軍が奪回するまで4年にわたり戦闘が繰り広げられた。せっけん工房が多数あるアルナイラブ地区もこの戦闘で大打撃」を受けた。
内戦が始まると製造業者は内陸部のアレッポを脱出し、トルコやシリア国内の別の都市でせっけん製造を続けた。しかし、アレッポほどのせっけんはできない。そう判断した業者が、政府軍が奪回したアレッポに帰還して工房を再開した。がれきの山が残るなかに、ローレル(月桂樹)オイルとオリーブオイルの香りが戻ってきた――というのが、記事の内容だ。(アレッポのせっけんは両方のオイルでつくられる)
若いときはテレビコマーシャルに登場するシャンプーを使っていた。ところが、すぐ頭がかゆくなり、フケがこぼれ落ちる。たまたまアレッポのせっけんに切り替えたら、フケもかゆみも止まった。長年使っているうちに、足の指の水虫も、足裏のひび割れも治まりつつある。いよいよアレッポのせっけんを手放せない。
カミサンが店で扱っているアレッポのせっけんの製造業者は、やはり内戦が始まると、アレッポから南西に位置する港町ラタキアへ脱出し、そこで製造を再開した。せっけんは出荷まで2~3年は寝かせるという。アレッポ時代の在庫は切れたろうから、今使っているのは「ラタキアのせっけん」か。
それはともかく、東日本大震災とシリア内戦がほぼ同時に起きた。以来、私のなかではシリア難民も原発難民も同等・同質、受け入れコミュニティとの関係も同じ――そう考えるようになった。ときどき、アレッポのせっけんを手にして、ほんとうに戦争は壮大なムダ、庶民の生業と生活を破壊する――とも思う。
AFPの記事にはこんなことが書いてあった。帰還した業者のことば。「せっけんは『国の宝』で『サウジアラビアにとっての石油、スイスにとってのチョコレート、ドイツにとっての自動車』に匹敵する」。せっけんは平和産業そのものだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿