イスラム世界のことはよくわからない。わからないからこそ過剰な不安は持つな、無関心にもなるな――そう自分に言い聞かせるのだが、なかなか考える手立てはなかった。
たまたまカミサンが移動図書館から借りた本のなかに、佐藤優『大国の掟――「歴史×地理」で解きほぐす』(NHK出版新書)があった=写真。英米・ドイツ・ロシア・中東・中国の現在と過去を俎上(そじょう)にのせて分析している。
中東諸国の成り立ちと欧米との価値観や文化の違いが少しわかった。オスマン帝国が中東を支配していた時代がある。第一次世界大戦ではドイツ側について敗北し、フランス・イギリス・ロシア3国が帝国の領土分割や勢力範囲を決める。宗教事情や部族分布、資源配置などと関係なく国境線が引かれたという。
欧米が手に入れた民主主義は「人権」が基本になる。しかし、中東では「人権」より「神権」が優先される。「アラブの春」は、結果的に内戦というパラドックスを生んだともいう。
年をまたいでこの本を読んだ。アメリカ同時多発テロ、アルカイダ、タリバン。アフガン侵攻、イラク戦争。アラブの春、内戦、IS、難民。イスラム世界が気になりながらも、よくわからないというもどかしさが滓(おり)のようにたまっている。それをもみほぐしにかかった矢先、ゴーン事件、司令官殺害事件がおきた。
折も折、海上自衛隊が中東へ派遣されることが決まった。世界はこれからどうなるのか、日本はどこへ向かおうとしているのか――。シリアの「アレッポのせっけん」を使っている身としては、中東から目が離せない。
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