夏井川渓谷の小集落は「自然と人間の交通」が濃密なところ。住民は周囲の森に分け入って、季節の恵みを手に入れる。
今はどうかわからないが、東日本大震災と原発事故が起きる前は、春には山菜、秋にはキノコの話をよく聞いた。
それぞれに自分のシロがある。マツタケの話をしても、どこで採ったかは誰も言わない。森の中で家に戻る途中の住民に会ったことがある。マツタケを採って来たという。「どこで」と聞くと、「あっちで」と道の奥を指さす。
その意味では、自然の側も人間の影響を受けている。が、住民が山菜やキノコを採るレベルでは、自然の回復力の範囲内といっていい。
住民は、季節の移り行きを示す草木の芽生えや開花には敏感だ。家の庭はもちろん、その周囲にも目を凝らす。
小集落で3月中旬に寄り合いがあった。そのとき、私がブログに書き、古巣のいわき民報に転載されたシュロの北上の話になった。
1年前は全く気づかなかったが、伐採された杉林の跡地にシュロが1本、逆光の中で立っていた。牛小川のシュロは、鳥が種を運んで来たという。それが、あそこにも、ここにもある。
シュロは幹の繊維が燃えやすいので、家の近くには植えない、とも聞いた。ネットにも「燃えやすい着火物」とあった。防火面からもシュロの存在を考える必要があることを知った。
すると、やはり温暖化も関係しているのか、マンリョウも増えている――そんな話になった。マンリョウ? あの正月の縁起物とされる常緑の小低木が増えている?
寄り合いから街に戻り、すぐわが家の庭を見る。ある、ある。マンリョウの幼木=写真=が、あっちにもこっちにも生えている。
庭をパッと見て目立つのはヤツデ。これが何本もある。シュロは小さいのが1本。いずれも鳥が種を運んで来て活着したものだろう。
マンリョウを数えたら、芽生えから20センチほどに育ったものまで十数本あった。思った以上に多い。
ウィキペディアその他のネット情報によれば、マンリョウはサクラソウ科ヤブコウジ属で、茨城県以南の太平洋岸と、鳥取県以南の日本海岸に自生する。
富山県では、家の庭に植えられても、自然の中には生えていなかった。それが近年、植えてもいないのに公園の生け垣の下などで育ち始めているそうだ。
シュロと同じように、マンリョウも北へ、内陸へと生息範囲を拡大しているのだろう。
わが家の庭のマンリョウは、まだ赤い実を付けたことはない。実が生るのは3年目くらいだそうだ。
そのままにしておくとどんどん増える、ともあったので、いつかは整理する必要がありそうだ。
ついでながら4月下旬の日曜日、小野町へ車を走らせた。あぶくま高原道路の延伸部分を試走するのが目的だったが、途中、道沿いにシュロが生えているかどうかもチェックした。
いわき市の川前支所付近と市境の五味沢の民家の庭にシュロが生えていた。小野町の夏井地区では確認がとれなかった。
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