13年前の東日本大震災と原発事故以来、一貫して被災者と避難者に寄り添って詩を書き続けている。
いわきの詩人木村孝夫さん(平)。若いころからお名前は知っていた。が、実際にお会いしたのは震災後、シャプラニール=市民による海外協力の会がいわき市で交流スペース「ぶらっと」を開設・運営していたときだ。
カミサンがシャプラの会員、私がマンスリーサポーターだったので、半分は運営側の人間として「ぶらっと」にかかわった。
木村さんはそこにできた将棋クラブの一員だった。以来、シャプラが5年に及ぶ活動を終えてからも、夫婦ぐるみで付き合いを続けている。
木村さんは震災後、『ふくしまという名の舟にのって』(2013年)、『桜蛍』(2015年)、『夢の壺』(2016年)と、精力的に詩集を出した。
その後も、ポケット詩集『私は考える人でありたい――140文字の言葉たち』(2018年)、同『六号線――140文字と+&の世界――』(2019年)、モノクローム・プロジェクト(兵庫県)のブックレット詩集20『福島の涙』(2020年)と刊行を続けた。
さらに、2021年春には詩集『言霊(ことだま)』(純和屋)を、翌2022年もモノクローム・プロジェクトのブックレット詩集27『十年鍋』を出している。
『ふくしま――』は福島県文学賞・詩の部門正賞、『福島の涙』はいわき民報社のふるさと出版文化賞優秀賞を受賞した。
と、ここまで書いてきて、木村さんの詩魂の強靭さにあらためて驚く。その思いの強さ、深さは『桜蛍』のあとがきからもうかがえる。
「できるだけ避難者の内面的なものを描くという目的を持って書いています。どこまで避難者に寄り添い、その思いに触れ、描き切れたのかは分かりませんが、書きながら、何回も被災場所に行ったり来たりしながら、また奉仕活動を通して多くの避難者の声を聴きました」
その木村さんからまた詩集をちょうだいした。シリーズ100人の詩㉝『木村孝夫詩集 持ち物』(詩人会議出版、2024年)で、「あとがき」に詩集の意図がつづられている。
ロシアのウクライナ侵攻などを機に戦争反対の詩も書き始めた。震災詩についても、書くことに蓋を閉じることはしない。
「平和の喫水線が沈みかけている/疑似平和に惑わされてはならない/軍靴の音に高揚してはならない//戦争に蓋を被せる国はないのか?/と 問いたい」(「喫水線」)
この問いには強く同意する。そして、詩集のタイトルになった震災詩「持ち物」。行方不明の魂がある。生き残った者も津波の夢を見る。寝室が、記憶が海になる。
「明け方近くなのだろう/風邪を引かないようにと/叔母さんは/眠ろうとしても眠れないのだ//持ち物を探している/一つ見つかれば仏間に戻れるはずだ/長く深く眠る為に」
根底にあるのは、人間の尊厳を踏みにじる人災や戦争への怒り、自然災害に対する悲しみだろうか。
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