2024年5月1日水曜日

オナガが現れる

                     
 夏井川渓谷の森は早くも初夏の装いに変わった。隠居の玄関前にあるコバノトネリコ(アオダモ)が淡い緑の葉をつけ、円錐状に白く小さな花のかたまりをつけている=写真。

 大型連休前半が終わった。とはいえ、毎日が日曜日で月曜日のような年金生活者には、連休の感覚はない。現に区内会その他の仕事や用事が続く。

 それでも、日曜日には気分転換が欠かせない。4月28日の朝、夏井川渓谷の隠居へ出かけた。

 滞在時間は正午までの2時間ちょっとだったが、その間ずっと鳥の声が耳に飛び込んできた。

 いつもは平地の夏井川の堤防でウグイスの初音を聞き、ツバメの飛来を目撃する。

しかし、この何年か平地の川では土砂除去と強じん化工事が続き、岸辺の木々と河原のやぶが姿を消した。すると、ウグイスのさえずりも消えた。

 それもあって、今年(2024年)のウグイスの初音は渓谷で聞いた。ツバメは隠居へ行く途中、平窪あたりで遭遇した。

渓谷に定着した籠抜け鳥のガビチョウ(中国原産)は、4月前半はまだ静かだった。ところが、4月最後の日曜日はどうだ、ひっきりなしにさえずり、それに負けまいとウグイスもさえずる。

ほかの鳥もさえずっていたようだが、ガビチョウのやかましさにかき消されて、よくわからなかった。

そうこうしているうちに、少し大きな鳥が隠居の坪庭のカリンの木に止まった。オナガ(尾長)だった。私は居間にいた。

その距離ざっと4メートル。枝に止まって黒い頭、青白い体と長い尾を見せたかと思うと、すぐ飛び去った。もう1羽が付き添うように後を追っていった。

拙ブログにオナガを見たときの記録が残っている。東日本大震災のほぼ1カ月前、平地の夏井川の堤防を散歩していたときに、河原のヨシ原に止まっていたのを目撃した。その記録を要約・再掲する。

――オナガはカラスの仲間だ。昔は、いわきにはいなかった。関東から移動してきた。

私が初めて目撃したのは1990年代だったように記憶する。黒い頭、淡い灰褐色の背中、青灰色の翼と尾。この尾が長いので、オナガ。色の組み合わせがいい。しゃれている。

いつも同じところにいる、という鳥ではないようだ。いわき駅裏の物見ケ岡、夏井川渓谷、新舞子の海岸林、夏井川下流の河畔林と、さまざまな場所で見かける。

しかし、それは3カ月ぶり、半年ぶり、そんなサイクルでのこと。一度現れると、しばらくは姿を見せない――。

 渓谷でオナガを目撃したのも久しぶりだ。通い始めて30年近く。夏鳥のアカショウビンの鳴き声を一度だけ聞いたことがある。それと同じように、めったに現れない鳥ではある。

 そうそう、初夏の鳥の声でいえば、カッコウの鳴き声が消えてだいぶたつ。カッコウはオオヨシキリなどに托卵する。

 震災の年の夏、夏井川の堤防で、それこそ久しぶりに「カッコー、カッコー」の声を聞いた。その後はまた沈黙したままだ。この喪失感はどうしようもない。

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