2024年5月31日金曜日

ワラビの味噌漬け

                     
 春の大型連休をはさんで、フキやコゴミ(クサソテツ)といった山菜、栽培物では越冬して開花し、実が若いサヤエンドウのお福分けが続いた。

 夏井川渓谷の隠居の庭にはフキが出る。早春のフキノトウ、初夏の若いフキがてんぷらや汁の実、炒め物になって食卓に上る。それでも余る。これらも鮮度を保っているうちに、お福分けに回る。

 素材そのもののほかに、このごろは調理されたものが届く。ありがたい。下準備の手間が省ける。カミサンは器に盛るだけ。私もよその人の料理が楽しめる。

 高齢になって独り暮らし、あるいは夫婦だけという家庭が増えた。食べる量が減ったことも、調理済みを歓迎する理由のひとつだろう。

 というわけで、5月は山菜のお福分けのおかげで、あっさりしたおかずが多かった。ときには、何かボリュームのあるものを、と思わないでもなかったが、老夫婦プラス義弟の3人だけでは、量に不服はない。

 山菜は、昔からの食べ方しか思い浮かばない。いや、それが普通だと思っていた。ところが、料理はアイデア次第でいくらでも変わる。

料理そのものが創造的な営みだということは、テレビの料理番組を見ればわかる。同時に、自分でも糠漬けを続けていて、しばしば実感することだ。

先日、ワラビが食卓に出た=写真。味噌漬けだという。ワラビの味噌漬け? 最初はいぶかしがったが、口に入れると、これが「いける!」。

お福分けをよく携えてくるカミサンの茶飲み友達が、「友達がつくったものだ」といって持ってきてくれたという。

お福分けのお福分けだ。ワラビの味噌漬けは初めてだったので、ネットで情報を探ると、いろいろ出てきた。

まずはワラビをゆでる。すぐ冷水にとって一晩さらす。ぶつ切りにしてタッパーに入れ、味噌と味醂をまぜて、冷蔵庫で一晩保管すると翌日には食べられる、とあった。

洗ったワラビを味噌の中に並べる。味噌はワラビ全体にしっかりつける。1~2日で表面に水が出てきたら食べられる、ともあった。

ちょうだいした味噌漬けのワラビも、たぶんどちらかのやり方で出来上がったものにちがいない。

味噌漬けだけでなく、ワラビの糠漬けもあった。こちらはアクを抜いたワラビを糠床に入れるだけ。2日くらいたつと食べられる。茎はオクラのような粘りがあるという。

夏井川渓谷では4月末になるとワラビが採れる。摘んだあとから子ワラビが現れる。これも摘む。夏には次の年のことも考えて、摘むのを最後にする。これを「終わり初物」という。

終わり初物には早いが、ワラビはもういい。糠漬けを試すとしたら来年だ。スーパーから買ってきて、糠床を再開すると同時に漬けてみようか。

創造力という点では、文学や音楽、美術などを思い浮かべることがほとんどだったが、料理もまたそうだ。

日常生活の中では食欲が最も創造力と結びついている。私のなかでは、今や料理は文学を超えている――そんなことをときどき思う。

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