2024年5月29日水曜日

うどんの冷やだれ

                              
 いわき昔野菜保存会の総会が開かれた。終わって交流会に移り、2月に実施した昔野菜フェスティバルを振り返りながら、昔野菜(伝統野菜)の栽培や調理の話になった。

 フェスティバルの行事の一つ、種の交換会では昔野菜を食べてみたい人が多いことを実感した。作物や栽培方法などを写真で視覚化すると、より理解が深まる――そんな意見も出たという。

 容器に土を入れてナガイモを栽培した人は、写真を見せながらそのやり方を解説した。

ペットボトルで大根を栽培する人もいるという。これもナガイモと同じベランダ栽培の一つだろう。

 ネットで確認したが、ペットボトルの上部をカットし、底部に排水穴を開ける。ボトルに鉢底石を入れて土を詰める。表面に3カ所、種をまいて、いい苗を1本残す。あとは畑と同じやり方で育てる。

このあと、話が思わぬ方向に発展した。長年、ジュウネン(エゴマ)を栽培している人がいる。夏の食べ物にジュウネンを使った「そうめんの冷やだれ」がある。今度、「うどんの冷やだれ」を試食しよう、うどんはもちろん自家製で――。

 「そうめんの冷やだれ」には思い出がある。平成5(1993)年度から2年間、いわき地域学會がいわき市の委託を受けて、伝統郷土食調査を行った。それが同7年3月、『いわき市伝統郷土食調査報告書』として刊行された。

 カツオやサンマなどの浜の料理のほかに、山菜や野菜などの料理がレシピ付きで紹介されている。

 調査委員の一人として編集・校正を担当した。そのなかで一つだけ、調査を提案した料理がある。「そうめんの冷やだれ」だ=写真。

いわき市の南部、山田町の後輩の家で夏の暑い盛りにこれを食べたことがある。たれにはジュウネンが使われた。

材料はサンショウの皮(1週間ほど陰干しにしたもの)・ジュウネン・味噌・水・醤油で、そうめんは太めのものを使う。

報告書のレシピによると――。まず、サンショウの皮をフライパンで乾煎(からい)りする。弱火から中火でさっと炒り、ジュウネンも加える。これもさっと炒る。

これらを擂り鉢にあけて擂る。味噌を入れてさらに擂り、徐々に水を加えてのばしたあと、醤油や化学調味料などで味を調える。

わが家でも、暑い盛りにはジュウネンの冷やだれでうどんを食べる。拙ブログによれば、月遅れ盆が終わり、あまりの酷暑にげんなりしていたとき、カミサンが庭からミョウガの子を摘んで、ジュウネンの冷やだれをつくった。

茶の間を避けて寝室で本を読んでいたら、ジュウネンを炒って擂る香りが漂ってきた。それに食欲が刺激された――そんなことを書いていた。

阿武隈高地では、「よごし」といえばゴマよりはジュウネンのことが多い。彼岸には「ジュウネンぼたもち」(春)、「ジュウネンおはぎ」(秋)もつくる。

いわきの昔野菜はやはり、ジュウネンが代表(もう一つは小豆の「むすめきたか」)ということになるようだ。

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