2024年9月5日木曜日

サザエさん

                                
 「サザエさん」を知ったのはいつだろう。生まれ育った阿武隈高地の家では県紙を取っていた。なにかの折に朝日新聞で4コマ漫画を見たのが最初だったか。

 しかし、パッと思い浮かぶのは漫画の顔よりも、サザエさんを演じた歌手江利チエミだ。おっちょこちょいな性格がよく出ていた。

サザエさんは映画化もされたというが、記憶にはない。おそらくテレビが家庭に入り込んだ初期、ドラマを見て、主演の江利チエミ=サザエさんのイメージが定着したのだろう。私が10代後半のころだ。

 東京の読書推進運動協議会から会報「読書推進運動」が届く。最新号(2024年8月15日付)で、朝日新聞出版AERA編集部の「サザエさん」担当が、同編集部編『「サザエさん」の昭和図鑑』(2024年)を紹介している。

 タイトルは、<漫画『サザエさん』が持つ「普遍性」と「時代性」>で、<「敬老の日読書のすすめ」によせて>という副題がついていた。

 新聞連載の『サザエさん』から202本を選び、各漫画に描かれた当時の衣食住や社会情勢を、白黒写真とともに解説したものだという。

 ちょうどそれに合わせて、カミサンが『サザエさん』の文庫本を持って来た=写真。主婦同士のリサイクルの中でわが家に届いたものだという。

 これもなにかの縁だ。サザエさんの面白さを確かめてみよう――というわけで、漫画を読み続けている。

 図書館には『昭和図鑑』のほか、現在も朝日新聞beで連載中の「サザエさんをさがして」の単行本2冊がある。それらも借りて読んだ。

直近の8月31日付朝日beは、カツオがリンゴを丸かじりしようとした瞬間、サザエさんがそれを取り上げる。カツオは怒りを爆発させて家族に文句を言う。

サザエさんはそれに対して、リンゴの皮には農薬がついているかもしれないから、と得意になっていう。カツオはそれを聞いてシュンとする。

見出しは「奇跡のリンゴ」で、その後、時代の流れとして完全無農薬栽培を実現した青森県のリンゴ農家を紹介している。

『さがして』のトップは1967(昭和42)年1月24日付「カラーテレビ」だ。1964年の東京オリンピックを機に、テレビがだんだん白黒からカラーに切り替わる。

母親のフネとサザエさんがこたつに入って、男性2人が対談中の白黒テレビを見ている。フネが「家庭における父親の座」とつぶやけば、サザエさんが「ますますさがる一方」と応じる。

すると、そこへ現れた父親の波平がなにを勘違いしたのか、「まだまださがるぞ‼じきを待て」と2人にいう。

あっけにとられた2人は顔を見合わせる。「さがるものてば、カラーテレビだと思ってる」「不べんきょうだワ」

下がる一方の父親の権威と、量産化で間もなく安くなるカラーテレビを引っかけたユーモアこそ、サザエさんの真骨頂であり、庶民の昭和史そのものだった、ともいえる。ユーモアのもとは早とちり、勘違い、おせっかい。なんとゆるやかな時代だったか。

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