菌類(主にキノコ)の本を読んでいて、「あれ、そういえば、なぜ石炭ができたんだろう」と、遅まきながら疑問に思ったことがある。
というのは、キノコにはシイタケやナメコ、エノキタケのように、樹木を分解して土に返す木材腐朽菌がある。
それなのに、なぜ巨大化したシダ類などが分解されずに堆積し、地中で石炭になったのか。
東日本大震災と原発事故以来、キノコは腰にかごを縛り付けて「採る」のではなく、首からぶら下げたカメラで「撮る」だけのものになった。
石森山や夏井川渓谷の森を巡ることも激減した。代わって増えたのが、本の森を巡ることだった。
石炭が生まれ、やがて途絶えたのはなぜか。菌類をテーマにした本を読んでいるうちに疑問が解けた。
師走に入るとすぐ、シルバーサークルの例会で話をする予定になっていた。これまではいわきの文学の話などをしてきたが、今回は石炭を例に挙げながらキノコの話をすることにした。
いわきは常磐炭田の中心地だった。至る所で石炭が取れた。受講者は私と同年代かちょっと先輩だろう。蒸気機関車だけでなく、家庭の燃料としても石炭を見慣れていたはずだ。
というわけで、今回は「キノコの雑学」をテーマにした。ブログで取り上げ、古巣のいわき民報に転載された菌類関係の文章をコピーしてレジュメもつくった=写真。
実は今年(2024年)の春にも、石炭が生まれ、途絶えた理由をブログに書いている。
それとは別に、地球の誕生から菌類や植物の出現などを、今回もおさらいした。春のブログを土台に整理すると――。
地球が誕生したのはざっと46億年前。海に生命が現れるのはそれからざっと8億年後。シアノバクテリアが生まれ、やがて真核生物が誕生する。さらに海中で動物から菌類が分かれるのがおよそ10億年前。
それからしばらくたって、といっても4億5千万年前ごろだが、水中から陸上へと植物が進出する。
その先祖の藻類は根を持たなかった。藻類はすでに存在していた菌類と新しい関係を結ぶ。すなわち、菌類は植物の根の役目を果たす。この関係が進化を重ねて、現在の菌根菌、いわゆる菌根共生になった。
石炭についてはこうもいえる。3億6千万年前に石炭紀が始まる。やがてシダ類が巨大化し、大森林が出現する。植物の体はリグニンなどによって堅固につくられたが、それを分解する微生物はまだ現れていなかった。
その大森林を構成していた巨木が倒れ、湿地に埋まり、土中深く積み重なって、石炭になった。
一方で、石炭紀の終盤ともいえる3億年前ごろになると、リグニンを分解できる担子菌(白色腐朽菌と呼ばれるグループ)が登場する。
この菌の出現によって、リグニンを含む樹木はほかの有機物と同様、分解されるようになった。
つまり、石炭はこれ以後、地中に残らなくなった――といったことを踏まえて、キノコについてのあれこれを話した。
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