夏井川渓谷の隠居へ行くのに、ふだんは同川左岸に沿って伸びる国道399号(県道小野四倉線)を利用する。
右岸にも道路がある。県道小川赤井平腺で、こちらは夏井川だけでなく、JR磐越東線とも並走する。
磐越東線は始発・終着がいわき駅だ。市内の駅は夏井川に沿って赤井、小川郷、江田、川前と続く。
列車であれ、車であれ、左岸・平窪、右岸・赤井から小川町に入ると、夏井川の岸辺には竹林が連続しているのが見える。竹林にさえぎられて夏井川はとぎれとぎれにしか見えない。
小川郷駅のある小川は詩人草野心平のふるさとでもある。昭和17(1942)年10月、中国から一時帰国した心平は列車(ガソリンカー)に乗って故郷の小川へ帰る。
そのときの詩「故郷の入口」に、「もう切り割だ。/いつもと同じだ。/長い竹藪。/いつもと同じだ。」とある。
心平の詩を読んで以来、西小川の県道を通るたびに、「長い竹藪」も手入れ次第では立派な記念物になるのではないか、などと考えたものだが……。
令和元年東日本台風では、平の平窪地区を中心に、夏井川流域で大きな被害が出た。
その後、伐木、土砂除去などを経て河川の強じん化工事が進められている。心平の詩に出てくる「長い竹藪」も、それでかなり伐採された。
12月8日の日曜日、平に用があったついでに右岸の県道を利用して渓谷の隠居へ出かけた。県道からは右手に川が見える。
渓谷からの帰りにこの道路を走ることはある。が、隠居へ行くために利用するのは3年ぶりだ。「長い竹藪」はこの間にあらかた伐採された。
赤井にある磐東線の「切り割」と地続きのヘアピンカーブを過ぎて水田地帯に出ると、常磐道の長い高架橋が見えてきた=写真。
赤井と小川の境あたりで対岸の平窪へと夏井川をまたいでいる。竹藪が消えたために、初めて全景を視野に収めた。
すると、橋の名前が気になりだした。橋名は「常磐夏井川橋」、全長444メートルと、ネットにあった。橋桁は、橋脚と橋脚の間がやや曲線を呈していて、見た目も美しい。「いい橋だなぁ」。思わずうなった。
しかし……。高架橋はともかく、竹林には水害防備林としての役割があったはず。遊水池としての水田への流木・土砂の流入を抑える役割もあったはず。
そんなことも思い出したのだが、今では国の「河川哲学」が変わったのだろう。いわゆる「流域治水」。
とにかく洪水をすみやかに流す。そんな河川改修と強じん化工事に切り替わったようだ。
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