古い知識はアップデート(更新)しないといけない。稲垣栄洋静岡大学教授の『雑草学研究室の踏まれたら立ち上がらない面々』(小学館、2023年)=写真=を読んで、そう思った。
植物学的な記述は事実だが、登場する教授や研究室の学生はフィクション化されている。その点ではエッセーというより小説に近い。
タイトルにある「踏まれたら立ち上がらない」は、「雑草の生き方」に関係する。著者は「四つ葉のクローバー」の章でそのことを強調する。
まずは「幸せのシンボルである四つ葉のクローバー」に、「シロツメクサの葉っぱ」とカッコ書きが入っている。四つ葉はアカツメクサを含まず、シロツメクサに限る現象らしい。知らなかった。
四つ葉ができる原因のひとつは、葉の基になる葉原基(ようげんき)と呼ばれる部分が傷つくことにある。
踏まれると葉原基が傷ついて、三つ葉になるはずが四つ葉になってしまうのだという。なるほど。
そこから人間の生き方に話が及ぶ。踏まれている雑草は立ち上がらない。踏まれても大丈夫なように、立ち上がらずに寝そべっている。
雑草は踏まれながらもタネを残す方にエネルギーを使う。「大切なことを見失わない。それが本当の雑草魂」なのだそうだ。
台湾が原産のタカサゴユリは、帰化雑草として日本国内に広まりつつある。このユリは日本の南西諸島に自生するテッポウユリから進化したと考えられているそうだ。
台湾から日本へ、ではなく、南西諸島から台湾へ渡ってタカサゴユリになり、それが日本へ逆輸入されたというわけだ。
いわき地方で横向きに咲く白い花=タカサゴユリ(あるいはシンテッポウユリ)が目につくようになったのは、私が40代のころだ。
8月も後半に入ると、新しいバイパスや高速道路ののり面がこの白い花で埋め尽くされた。
テッポウユリか、タカサゴユリか。文献に当たると、テッポウユリは春~初夏に、タカサゴユリは夏に咲くことがわかった。
それで、タカサゴユリとテッポウユリの交雑種、シンテッポウユリだろうという専門家の意見を受け入れていたが、タカサゴユリだという人ももちろんいる。
タカサゴユリの花には赤褐色の筋がある。ところが、赤い筋のないものもある。要するに、タカサゴユリとシンテッポウユリの両方が生えているのだと考えればいい?
「富士山には月見草がよく似合う」。太宰治が「富嶽百景」で紹介した月見草は、明治時代に帰化したオオマツヨイグサのことだという。
オオマツヨイグサは時代が経るとコマツヨイグサ、さらにはメマツヨイグサにとって代わられ、現在はコマツヨイグサが広まっている、のだとか。
という次第で、目からうろこの話が続く。タマネギは新分類法によって、今はユリ科からヒガンバナ科に変わった。それについては後日紹介したい。
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