2024年12月7日土曜日

生八つ橋

                     
   孫がみやげを持ってきた。奈良漬け、もみじ饅頭のほかに、もう一品。栗(くり)が描かれた小さな箱の表に、「こたべ」と平仮名で書かれた紙が張ってある=写真。生八つ橋だった。

 それぞれの名字に合わせて売っているのかと思ったが、そうではなかった。商品名らしい。

 さっそく賞味する。もちもちした米粉と、さっぱりした甘みが口の中に広がった。さすがは京都、上品な味だ。

 にしても、なんで「こたべ」なのか。箱に入っていた宣伝文を読む。「ちいさいから『こたべ』。おたべの子供だから『こたべ』。ふた口サイズのいつものおたべを、ひとくちサイズにちいさくかわいく仕上げました」

 由来はともかく、「おたべ」そのものが何なのかよくわからない。キーワードを変えながらネットで調べた。

 製造元は美十(旧社名おたべ)で、京都弁の「おたべやす」を略して、生八つ橋の「おたべ」を製造・販売している。

「おたべ」を小さくしたものが「こたべ」。これも商品名なのだろう。3時の「おやつ」が小さいから「こやつ」と呼ばせるようなものか。

 生八つ橋の味に触発されて、11年前、京都を旅したときのことを思い出した。修学旅行から数えると、46年ぶりの再訪だ。

15歳で出会った同級生たちと還暦を機に「海外修学旅行」を始めた。震災後はこれに国内旅行が加わった。

外国は北欧、台湾、ベトナム・カンボジア、ロシア(サハリン=樺太、ウラジオストク)など。国内は会津、そして京都・奈良。

京都と奈良へは平成25(2013)年7月に旅した。京都では祇園のお茶屋で舞妓さんとじかに話し、奈良では東大寺の大仏様に手を合わせた。

ちょうど祇園祭が行われていた。街の中に「山鉾」が立っていた。行き交う人もふだんより多いとバスガイドさんが教えてくれた。

そのときのブログを再掲する。――無料で配られている京都新聞発行の「祇園祭特集2013」(タブロイド判8ページ)に目を通す。

私たちのような観光客向けのフリーペーパーだろう。祭りの歴史、「山」と「鉾」の違い、主な行事日程などをざっと学習した。

「京の都で疫病が度々流行した平安時代、当時これは怨霊の仕業と考えられ、頻繁に厄よけ祈願の祭礼が行われていた。869(貞観11)年には、当時の国の数にあたる66本の矛が神泉苑に立てられ、悪霊退散が祈願された」

これが祇園祭の始まりだとか。貞観11年といえば、東日本大震災と同規模の「貞観地震」が発生した年だ。みちのくの天変地異も念頭においての悪霊退散祈願だったか――。

そんなこともあったと、文章を読みながら思い出していた。これもまた、生八つ橋「こたべ」の後味のよさというものだろう。

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