去年(2024年)の5月末だったか、知人から「お伊勢参り」のおみやげをちょうだいした。紙の箱に「御神酒(おみき)」と書いてあった。
銘柄は兵庫県西宮市の日本酒「白鷹」、300ミリリットルで、伊勢神宮崇敬会が販売元だった。
箱から取り出すと、いかにも御神酒の入れ物らしい容器が現れた。真っ白い瓶子(へいし)で、長めの蓋(ふた)がしてあった。
そのころは糖質・プリン体ゼロの焼酎を飲んでいた。日本酒は「今はまだいい」と、神棚に供えてそのままにしておいた。
その後、心臓由来の血栓からくる脳梗塞と抗凝固薬の長期服用による出血のリスクを減らす目的で、「左心耳閉鎖術」を受けた。
担当医は「節酒を」というので、飲むのを自主的にやめた。以来、そのまま年を越して立春を迎えた。
この日は診察日でもあった。問診のついでにドクターとアルコールの話になる。7月の手術以来、断酒を続けているというと、ちょっと驚いた表情になった。
飲んでもいいことはわかっている。ただし、日本酒は1合、焼酎なら0.6合、ビールなら500ミリリットルまで。
近所のかかりつけ医院から渡されていたコピー資料が出てきた。「生活習慣病療養計画書」とあった。その中に書かれていた内容と同じであることを再確認する。
一日の基本は、断酒してもそう変わらない。が、晩酌がなくなっただけで生活のリズムはいちだんと単純になった。
これまで浴びるように飲んできた、一生分どころかあの世の分まで飲んでしまった、という思いがある。
一方で、なお気持ちは揺れ動く。日曜日の晩の、刺し身のときくらいは……、なんて。
立春の診察日の翌日から、アルコールを再開した。最初は神棚に供えた御神酒を。蓋が猪口(ちょこ)になっているので、それに一杯だけ。あとで水を入れて測ったら、1合換算で9分の1の20ミリリットルだった。
次は、ちょっと小さめのそば猪口で、やはり御神酒と同じ銘柄の日本酒を=写真。この容器は水で測ると80ミリリットルほどだった。ということは、1回だけお代わりができる。
容量が頭に入ると、今度は猪口の文様が気になった。しろうとには畑の蕪(かぶ)のように見えたが、実は定番の松竹梅だった。蕪に見えたのは松に笹(竹)、反対側に描かれているのはどうやら梅の花らしい。
焼酎だとお湯割りになる。ビールだとすぐなくなる。ここは日本酒をチビリ、チビリとやる。
去年夏の酷暑以来、水や牛乳の飲み方が変わった。ゴクゴクをやめて、少しずつ口に入れて、舌で押し込むようにして奥に流し込む。これだと後味がいい。
日本酒も同じ要領でなめるようにしてのどの奥に流し込むと、うまみが口に広がった。
かつては晩酌の時間が一日で一番リラックスして、楽しかった。その記憶がよみがえる。そば猪口で2杯、なめるようにして日本酒を飲む。今はその心地よさに浸っている。
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