2025年2月8日土曜日

森の情報ネットワーク

                             
 朝日新聞に第1・第3日曜日の月2回、「グローブ」という横組みの紙面が加わる。2月2日は森の菌根菌ネットワークを取り上げていた=写真。

 先日、拙ブログでスザンヌ・シマード/三木直子訳『マザーツリー 森に隠された「知性」をめぐる冒険』(ダイヤモンド社、2023年)を紹介した。

 シマードは菌根菌ネットワークを研究するカナダの森林生態学者で、「木々は互いに網の目のような相互依存関係のなかに存在し、地下に広がるシステムを通じてつながり合っている」ことを発見した。

「歳取った木々は若い木々を慈しみ、私たちが子どもにそうするのと同じように食べ物や水を与える。(略)古い木々は、子どもたちの母親なのだ」

母なる木=マザーツリーは「森で交わされるコミュニケーション、森の保護、森の知覚力の中心的存在」だという。

このマザーツリーは死ぬときに、「その叡智を親族に、世代から世代へ引き継ぎ、役に立つことと害になること、誰が味方で誰が敵か、つねに変化する自然の環境にどうすれば適応し、そこで生き残れるのか、といった知恵を伝えていく」。

 以上は『マザーツリー』の「はじめに」に出てくる文章だが、それだけでもシマードの研究のすごさが見えてくる。

 朝日グローブでは、記者がシマードに会い、シマードの研究成果を軸に、インドネシアや日本での造林の実例を紹介している。

 ベースになるのは「菌根共生」だろう。拙ブログでも何度か取り上げている。それをあらためて紹介する。

菌は土中のリン酸や窒素を、菌根を通して宿主である植物に供給する。宿主は光合成で得られた炭素化合物を、菌根を通じて菌に供給する。

土の中での、この「もちつもたれつの関係」は地球を覆う緑の8~9割に及ぶ。つまり、菌根が地球の緑を支えている――。

 朝日グローブの特集記事もそれを踏まえている。1ページ目の見出しは、「森は話す マザーツリーを探して」と、カナダのルポ「巨木とキノコが伝える 森を成長させる情報ネットワーク」だ。

 2~3ページでは、「熱帯の林でも再生に土中の菌類を生かす」(インドネシア)、「豊かなヒノキを生む土づくり」(日本)などの記事が続く。

 グローブは、国際化が進む中、通常紙面では伝えきれない情報を深く、詳しく伝える、という方針らしいが、地方の片隅に住む人間にはテーマが大きすぎるというか、暮らしから離れていて読み流すことが多かった。

 今回は誰にでもなじみのある森が主題で、しかも気象変動や地球温暖化と密接に関係している植物・菌類を、「つながり」をベースに紹介している。

 温暖化は、地方も中央も、国内も国外もない。人類共通の課題である。それを森のいのちの循環を介して伝えることに意義がある。資料として保存することにした。

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