2010年12月5日日曜日

雨過天晴


陶磁の理想の色は「雨過天晴雲破処」にあるという。<雨過ぎて雲破れる処>に青空がのぞく。その青はうっすらと緑がかっていたり、明るい水色だったりする。青磁はそこから生まれた。

詩人の佐々木幹郎さんのエッセー集『雨過ぎて雲破れるところ――週末の山小屋生活』(みすず書房)を読んで以来、雲の切れ間の“青磁色”が気になりだした。「青の青磁」より「緑の青磁」が好きなので、雨上がりには雲の切れ間に「緑の青磁色」を探す。

なかなかそんな色には出合わない。出合えばカメラを持っていなかった、あるいはカメラを持っていても車を運転中、といった具合で、これぞというものをパチリとやったことはない。移りゆく自然を相手にするわけだから、ただひたすら待つだけだ。

この秋、台湾へ出かけた折、国立故宮博物院を見学した。若い観光ガイド君の熱のこもった解説に感心しながら、名品の数々を見た。陶磁器のコーナーでは、「雨過天晴雲破処」の逸品に出合った。青磁の最高峰だという。

あとで故宮博物院のHPをのぞいたら、「青磁無紋水仙盆」の解説にこうあった。「湿潤で趣深い色合いは、正しく宋人が求めてやまなかった、雨上がりの空の青の如く明るく静けさに満ちた美しさである」

さて、冬の低気圧が暴風雨をもたらした12月3日午後、雲の切れ間にうっすら緑がかった青空がのぞいた。ちょうどカメラを手に街を歩いていたので、撮影した=写真。写りはいまひとつだが、私の腕ではこんなものだろう。むろん、いい青磁色が現れるならば、これからも写真は撮り続けるつもりだ。

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