2016年5月30日月曜日

恋人の聖地

 那須高原の宿へ行く途中、標高1000メートルちょっとのところに展望台があった。東に那須野と南北に連なる八溝山系が見える。その奥には阿武隈の山が連なっているはずだが、かすんでいてよく見えない。
 展望台に「恋人の聖地」のモニュメントと、恋人が2人一緒にふもとの街を見下ろせる「のぞき窓」が設けられていた。夜景が、ピエロが踊っているように見えるらしい。ピエロの鼻が赤く光って見えたら必ず2人は結ばれる――とモニュメントにあった。

 翌朝、ゴンドラに乗って、ゴヨウツツジ(シロヤシオ)が群生する標高1400メートルほどの山頂へ行った。見晴らしがいい。その一角、草原と林の境目にも「恋人の聖地」があった=写真。ダケカンバとゴヨウツツジが接触している。それを恋する2人に見立てた。

 説明板によると、推定70年余、こうして寄り添ってきた。この木のように末永く支えあい、共に過ごせることを願って「恋人の聖地サテライト マウントジーンズ那須」のモニュメントとして、「恋人の木」と命名した。強風に見舞われると摩擦熱が生じて自然発火をしないだろうか。なぜって、恋人は触れると燃え上がる、と決まっているから――なんてよけいなことはいわない。
 
 サテライトとあるのは、前述した展望台の「恋人の聖地」の“支所”のようなものだからか。
 
 それはそれとして、那須の山々の動植物は、ツキノワグマやカモシカ、ニホンジカなどを除くと、阿武隈高地とそう変わらないのではないか。かなり人間の手も入っている。山頂からの見晴らしがいいこと自体、そのあらわれだ。薪炭に、放牧に、スキー場に……。
 
 山頂のゴヨウツツジ遊歩道のうち、私だけ東側の展望台コースの途中まで行って引き返した(ゴヨウツツジの花は夏井川渓谷で見ている)。そのコース沿いにマイヅルソウやギンランの花が咲いていた。フキ、イタドリ、若いタラノキもあった(新芽はほとんど摘まれていた)。タンポポも花や綿帽子をつくっていた。セイヨウタンポポだった。
 
 カンバ類は標高が高くなるとシラカバからダケカンバに、ツツジ類もヤマツツジ・レンゲツツジからゴヨウツツジに変わる。マツ類も山の上部ではアカマツからキタゴヨウに変わるのではないか。きのうも書いたが、夏井川渓谷の急斜面を見てきた経験からの類推だ。

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