日曜日(5月1日)、いわき市から郡山市へ行くのに国道49号を利用した。帰りは同じ道を戻るのも芸がない。磐越道と国道288号は交通量が多い。それに、何度も通っている。国道288号と同49号の間のルートを利用して、のんびり帰ってきた。
主に県道57号(三春大越線=旧磐城街道)を走った。田村市~郡山市の幹線道路は国道288号だ。県道57号はひと山越えた南側の農村部を東西に横断する。山と言っても、「田村富士」の片曽根山(718メートル)を除けば小丘群が続く高原。視界は広い。
15歳まで同じ田村市(旧田村郡常葉町)で過ごした。ゆるやかなアップダウンのある風景が懐かしい。いや、“原風景”そのものでもある。
阿武隈高地の地形を研究した故里見庫男さん(いわき地域学會初代代表幹事)に「残丘」というエッセーがある(同学會図書16『あぶくま紀行』平成6年刊)。
「阿武隈高地は中生代白亜紀後期(八千万年前)に、山地全体が風化作用や河川の浸食などの準平原化作用によってほとんど平坦になってしまった。その後、第三紀における汎世界的な地殻変動によって、四回にわたって間欠的に隆起したことが知られている」
阿武隈高地の東側(いわき市など)は、河川の浸食が復活した。V字谷を形成する。西側は、平坦化した穏やかな風景が広がる。所々に見える山は「残丘」。独立峰で、お椀を伏せたような形の山もある。「田村富士」がそうだ。
郡山市から三春町へ入り、大滝根川の三春ダム(さくら湖)を左に見ながら田村市船引町芦沢字上山田地区に入ると――。狭い旧道と新設された大きな道の間の小丘に赤い屋根の小社が見えた=写真。わきに大木が枝葉を広げている。すごくいい感じの「里の風景」だ。
グーグルアースなどで確かめたら、入り口に鳥居がある。境内の大木は「山田の天王桜」。滝桜を頂点に、田村地方にはシダレザクラの古木が多い。「山田の天王桜」もそうだ。もうちょっと前なら、赤い屋根とピンクの花のコントラストが見事だったろう。
県道をさらに東進して別の道に入ると、映画にも登場した「小沢の桜」がある。こちらはソメイヨシノで、何年か前、なにかの用事のついでに満開の花を見た。「山田の天王桜」もそのたたずまいからして、地元の人間に大切にされていることが推察できた。この道沿いには大鬼の顔をした巨大な「お人形様」もある。民俗学的に興味深いルートだ。
ふるさとの隣町ながら、こうしてたまに山の向こうの高原の里を巡ると、少年時代の感覚が戻って気持ちが落ち着く。
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