夏井川渓谷の隠居で土いじりをしていると、近くの木で鳥がさえずったり、目の前にチョウが現れたりする。そのつど、ン!となって手を止める。なかなか名前を思い出せないときもある。おととい(5月8日)は「キーウイ、キーウイ」と「ジュイー、ジュイー」を聞いた。ともに南から渡ってきた夏鳥だ。
ウグイスやカラス、スズメ、トビは目にも耳にもなじんでいるからすぐわかる。「ジュイー、ジュイー」。ニイニイゼミのような耳鳴りを内蔵している身に、そう聞こえる鳥は一種しかいない。鳥類図鑑では「ジュウイチー、ジュウイチー」と記されているカッコウの仲間のジュウイチだ。
ジュウイチは夜も鳴く。現役のころは“週末別居”と称して毎週、隠居に泊まった。谷の瀬音のほかは音のない世界。そこへ突然、「ジュウイチ―、ジュウイチ―」と深い闇を切り裂くように鳴くものがいる。ホトトギスと同様、まだ起きて鳴いているのか。ゾッとするよりは哀れを感じたものだ。
昼の「ジュイー、ジュイー」を聞いてしばらくたったあと、今度は「キーウイ、キーウイ」が空から降ってきた。図鑑では「ピックイー、ピックイー」と表記されるタカの仲間のサシバだ。
見ると、2羽が旋回している。それがバラけたあとにまた、2羽がからむように飛んでいる=写真。前と違って1羽は黒い。カラスだ。ハシボソだろう。カラスはタカ類をなんとも思わない。ちょっかいか本気かはわからないが、よくトンビにからんでは追い払うのを見かける。サシバにも同じような理由で接近したのだろう。
サシバを追って隠居の前の道端まで出ると、軽くクラクションを鳴らして通り過ぎる軽乗用車があった。望遠レンズ付きの重いカメラを手に、じっと空を見上げていたので気づくのが遅れた。100メートルほど先で右折したところを見ると、地元・牛小川の住民のKさんらしかった。
おととい、夏井川渓谷で出合った生き物は、チョウではベニシジミ、モンシロチョウ、スジグロシロチョウ。鳥は、ジュウイチ、サシバ、カラスのほかにウグイス。平地に下りると、平市街の新川、下流の夏井川でオオヨシキリのにぎやかな声を聞いた。
モンシロチョウはキャベツの葉裏に卵を産む。いちいち葉を持ち上げて確かめるのも面倒なので、追肥と土寄せだけにとどめた。ジュウイチはオオルリやコルリに托卵するという。オオルリのさえずりも――と耳をすませたが、声はなかった。きょうから愛鳥週間。
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